自分が嫌い、対人関係が上手くいかない…そんなネガティブな感情を一掃する、12の会話術!

人間関係

公開日:2014/6/23

 あなたは誰かと会話しているとき、こんなことをやっていないだろうか?

・相手が話している話題とは無関係なことを考える
・相手の言っていることに対して心の中で反論する
・ネガティブ思考に影響されるがままになる
・求められてもいないのにアドバイスをしたがる
・聞き上手なふりをする
・次に話したいことを考える
・自分の目標達成のために会話の流れを変える
・会話の相手に対抗するために情報を集める
・自分が興味のある内容にだけ反応する
・何もかもが自分に対する当てつけだという被害妄想を抱く
・自分が聞きたくもないことに耳を貸さない

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 「やっている」と思った人は「聞き下手」の可能性が高いそうだ(全米人材開発機構前理事長リサ・J・ダウンズ氏による「聞き下手さんの行動パターン」より)。でも逆に考えてみて欲しい。自分が一生懸命話しているのに、相手にこんなことをされたら腹が立たないだろうか? 「この人は自分のことをわかってくれない」という相手に好意は抱かないし、こんなことを考えている人間の顔には、怒り・無関心・企みなどの表情が知らず知らずのうちに浮かんでいるものだ。

 対人関係の問題を解決するには、まず「自分の心と向き合うこと」が重要で、自分の心の状態を観察して「なぜそういう感情になったのか」「自分は何を求めているのか」を理解することが大事だという。そして相手と共感することがコミュニケーションに必要というのが『心をつなげる 相手と本当の関係を築くために大切な「共感コミュニケーション」12の方法』(アンドリュー・ニューバーグ、マーク・ロバート・ウォルドマン:著、川田志津:訳、名越康文:序文/東洋出版)だ。原題は『WORDS CAN CHANGE YOUR BRAIN 12 Conversation Strategies to Build Trust, Resolve Conflict, and Increase Intimacy』 訳すと「言葉はあなたの脳を変える 信頼を築き、摩擦を解消し、親密さを増すための12の戦略的会話」という意味になる。本書はアメリカの気鋭のベストセラー脳神経学者が、最新の研究やデータに基いて、コミュニケーションに関する仕組みと技法を「知識編」「実践編」「応用編」と3ステップで紹介し、自分の心と相手の心をつなげる「共感コミュニケーション」を説明している。それにはリラックスすることや、ゆっくりと話す必要性など12の方法があるという。

 例えば人間の脳というのは、たった30秒しか情報を保持することができないそうだ。ああでもないこうでもないとずっとひとりで話したりせずに、相手に伝えたい大切な情報は1、2文で完結に伝え、間を取る。またゆっくりと話すと相手の理解力が上がり、より尊重してもらえるというメリットもあるそうだ。スピーチの上手な人がゆっくりと短い言葉で端的に話し、ひとつの話題が終わったら間を取っているのは、そういう理由があるからなのだ。また相手の表情から気持ちを読み取る「非言語シグナル」も重要だ。本心が表情に浮かぶのはたったの0.25秒だけだそうだが、これを感知することでコミュニケーション能力をアップさせることができるのだ。このように12の方法を駆使することで関係性も良くなり、心が平穏になってストレスが減り、自分とのコミュニケーションも取れてメンタル的なマネジメントもできるようになっていくそうだ。またポジティブな気持ちで会話に臨めば、相手のネガティブな内容を軽減させ、争いも起こりにくくなるという。そして「怒り」は百害あって一利なしだ。ハーバード大学の進化動態研究チームによれば、懲罰を最終手段だとみなす人間(最後まで怒らない人)は他者からの協力が得やすく、金銭面でも恩恵を受けやすいという。つまり「人を懲らしめようとしないのが勝ち組、人を懲らしめた挙げ句に自滅するのが負け組」なのだ。

精神科医の名越康文先生も、序文で「自分の心を救いたい方、人間の心について知りたい方、心の問題に役立ついい本を探し続けてきた方は、これ一冊読めば完璧」と語る本書。自分のことがどうしても好きになれない人、家族やパートナー、職場でのコミュニケーションが上手くいかないという人にぜひ読んでもらいたい一冊だ。しかし12の方法を実践するかしないかは自分次第。一歩を踏み出す勇気は、自分の中からしか生まれないものだ。

文=成田全(ナリタタモツ)