池井戸ドラマで、犯人探し。ミステリー作家としての才能に触れよ

テレビ

2014/10/17

 最終回の視聴率が45.5%(関西圏)を記録したドラマ『半沢直樹』(2013年)。原作は言わずと知れた、直木賞作家・池井戸潤の小説だ。まずは“半沢直樹あるある”からお伝えします。「原作の中に、『倍返し』というセリフは1度しか出てこない」。「『十倍返し』という言葉は出てくるが、『百倍返し』はドラマオリジナル」。ドラマ版は堺雅人、香川照之ら濃ゆい俳優たちの演技により、原作の魅力がくっきり輪郭づけられることになった。ものすごく単純化して言ってしまえば、池井戸作品の真髄は「ストレスと、その解放」にある。上層部の悪役からぎゅーっと圧迫されにされた主人公が、終盤で疾風怒濤の反撃=倍返しに出る。圧迫され続けていたからこそもたらされる解放感と、とびきりの爽快感たるや。

 10月クールにて織田裕二主演で、池井戸作品『株価暴落』が連続ドラマ化される。今回対決するのは、企業への融資を決める「審査部」と「企画部」の両エース。制作は『空飛ぶタイヤ』(2009年)『下町ロケット』(2011年)と、池井戸作品にいちはやく目を付けたWOWOW組だから安心できる。10年前に単行本が刊行された本作は、「ストレスと、その解放」が先駆的に表現された金融エンタメでありながら、連続爆弾魔の正体を追うミステリーでもある。そうだった、池井戸潤は江戸川乱歩賞出身だったのだ! 池井戸ドラマで、犯人探し。新機軸だ。

文=吉田大助/ダ・ヴィンチ11月号「出版ニュースクリップ」