「ごたごた」「ボイコット」「助兵衛」が人名だって知ってた?

文芸・カルチャー

2014/12/20

われわれがふだんから使っている日本語。誰もがおそらく知っているであろう『広辞苑』にはおよそ24万語もの言葉が記載されているようだが、その中には、人名に由来したものもいくつか存在している。

例えば、スポーツなどでのいかさまをあらわす「八百長」だ。諸説あるものの、もともとは幕末から明治初期にかけて、八百屋の長兵衛(名前は「長助」という説もある。ちなみに野菜を売る八百屋との関連性は不明)が花相撲へ飛び入り参加したとき、親戚一同の見守る中で勝たせてもらえるように細工したことが由来だとされている。

このほかにも人名に由来した言葉があるのだが、それを1冊にまとめたのが『人名ではない人名録 語源探索』(小林祥次郎/勉誠出版)だ。本書にはいくつかの言葉が取り上げられているのだが、「え、これもそうだったの?」と思わず言ってしまいそうなものを、豆知識としていくつか紹介していきたい。

ごたごた

規則的なものがなく、ものごとが煩雑に散らばっている様子をあらわす言葉である。人間関係のごたごたに巻き込まれるとか、部屋の中がごたごたしているというように、日常でもよく使われる言葉だ。

じつは、由来とされているのは鎌倉の建長寺の2代目であった兀庵普寧(ごったんふねい)という人物だ。鎌倉幕府の第五代執権だった北条時頼から、文永2年(1265年)に宋より招かれた人物で、日本に本格的な禅宗を広めたともいわれている。

一説によると彼の話は要領を得ないことも多く、人びとはそれを揶揄するように「兀庵兀庵(ごったんごったん)」と口へ出すようになり、転じて「ごたごた」という言葉に変わったとされる。

ボイコット

個々人の意思により、何らかの取り組みや活動への参加を拒否するのを意味する言葉だ。あまり使う機会はないかもしれないが、たまに聞かれる言葉である。

この由来となったのは、アイルランドで土地の支配人をしていた、その名の通りボイコットという人物。1880年ごろ、みずからの主従関係にあった小作人からけむたがられた末に、支配人の立場を追われたのがきっかけだという。尚、英語では「boycott」がそのまま受け入れられないものを押しのけるという意味で使われ、排斥(はいせき)すると訳される。

助兵衛

固くいえば「好色」。端的にいえば「エロい」様子をあらわす言葉であり、ひょっとするとこれまで以上にもっともよく聞かれる言葉かもしれない。語感からして人の名前のようだが、やはり由来はあったようだ。

正しく定義すると、はっきりとした人物がいたわけではない。人の状態に「擬人名」と呼ばれる人のような呼び名を当てはめた言葉である。

一説によれば、小説家・幸田露伴が明治33年に刊行した『当流人名辞書』が発祥とされており、その中には「助兵衛。多情の人、または貧淫の人をさして云ふ」と記載があるようだ。

さて、人名が由来の言葉をいくつか紹介してきた。ふだん何気なく使っている言葉でも、由来を知るときっと誰かにドヤ顔で語りたくなるかもしれない。飲み会などで「じつはさ…」と、とっさに語ってみるのはいかがだろうか。

文=カネコシュウヘイ