「43歳で母になる」アラフォー出産は不安や苦悩ばかりなのか?

出産・子育て

更新日:2017/4/10

「高齢出産」という言葉が当たり前のように使われ、アラフォーを過ぎての出産を目指す者も増えてきた。だが、いくら数が増えてきたとはいえ、ハイリスクであることには変わらない。若い頃に産むのとは違う悩みを抱えることも少なくはないようだ。

 原案・山本恵氏、漫画・すぎうらゆう氏の『43歳で母になる』は、アラフォーで妊娠&出産を経験した山本氏の実体験を元としたコミックエッセイだ。ある日、山本氏が「食あたりかな」と思って病院を訪れると、妊娠9週目であることが発覚。40代前半で自然妊娠できるのは、数%という低い確率であるため、その「奇跡」に喜びを感じつつも、20〜30代の出産とは違う別の苦労を強いられることとなったという。

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 たとえば、ことあるごとに山本氏は「高齢出産だからハイリスクだ」との言葉をいろんな人に言われてしまう。確かに40代での出産は流産や染色体異常の確率が上がったり、未熟児として子どもが産まれる可能性もあったりなど、母子ともに危険を伴うことがある。だが、医者がそういうたびに「高齢」という2文字がグサグサと彼女の心に突き刺さったという。

 別に医者たちは、彼女をたらい回しにしたいわけではない。彼らは、山本氏の身体のことを考え、万全の体制で出産に望むために「周産期医療センター」を薦めてくれている。「周産期医療センター」とは、「周産期」(妊娠22週目から生後約7日未満)までの期間に起こるかもしれない緊急事態に備えて、母体や胎児、新生児に対しての専門的な医療に対応できる設備のこと。何らかの疾患がある新生児を集中的に診る「新生児特定集中治療室(NICU)」を備えており、アラフォー出産には、安心な施設である。だが、「高齢だから」「高齢だから」と言われると、不安に感じてしまう。ネットで情報を集めようにもマイナスな情報ばかり。「私ってそんなにおばちゃん?」。おめでたいことであるはずなのに、山本氏は悩まされることとなる。

 リスクが高いと言われ続けたことから、「安定期に入るまで、妊娠したことを話さない」と決めていたが、そうすると、周りに気遣ってもらうことができない。一番辛いのは、つわりで気分が悪くても周りに言えないことだ。テキトーなウソをついてやり過ごすが、なんともやりきれない。そんな中で支えになってくれるはずの夫の態度に山本氏は不信感を抱いてしまったという。まさに「産後クライシス」ならぬ「妊中クライシス」。つわりで辛いのにも関わらず「今日のごはんって何だっけ」と自分で作る気のない発言をしたり、「卵以外はないの?」とおかずにケチをつけたりする。流産の不安やつわりのことや40代での子育てなど、辛くても相談できる人がいない孤独に押しつぶされそうになったという。しかし、その危機を乗り越えてこそ、2人は本当の夫婦になることができる。子どもとともに夫婦も成長していくことになるのだ。

「染色体異常は43歳での妊娠だと50分の1の確率」と言われたこと。安定期に入って妊娠を報告するととても驚かれたこと。妊娠中からママ友を探そうとするも同世代が見つからなかったこと…。アラフォーでの出産は大変なことばかりだ。だが、周りの友人がすでに子育てをしているのは心強い。それに、バリバリ仕事をしてきたアラフォーとなると、将来のことを考えて先手に行動ができるようだ。出産準備リストを作成して出産後に必要なグッズを低価格で揃えたり、職場への復帰のために保育園に関する情報を調べたりなど、若い頃よりも念入りにしっかりと準備することができる。アラフォーだからこその利点もないわけではない。

 もし、アラフォーでの妊娠・出産を経験することになったならば、誰もが山本氏と同じような不安を抱えることだろう。しかし、大切なのは、このコミックエッセイの山本氏のように前向きさを忘れずにいること。夫と協力し合いながら、人生最大のイベントを乗り切るカギがこの本には隠されているかもしれない。

文=アサトーミナミ