今夏、舞台化も決定! 不朽の名作『こどものおもちゃ』が描く、少年少女の心の闇…

マンガ・アニメ

2015/3/22

 世間を震撼させた「川崎市中1殺人事件」。事件の裏にあるものを巡って報道合戦が繰り広げられ、“少年の心の闇”について議論が交わされている。最近の子どもが考えていることはよくわからない――。そのように評する大人も少なくない。けれど、心に闇を抱えているのは、本当に“最近の子ども”だけだろうか。いや、そうではない。いつの時代だって、少年少女の複雑な胸の内は、大人には理解し難いものだったはずだ。

 それを如実に描いた作品がある。今夏、舞台化も決定している『こどものおもちゃ』(小花美穂/集英社)だ。これは、いまから約20年前に少女マンガ誌『りぼん』(集英社)にて連載されていた作品。しかしながら、そこに描かれているのは、少年少女が苦しんでいる姿。学級崩壊、教師いじめ、少年犯罪、家庭不和…。これらは、まさにぼくらがいま直面している問題となんら変わりないではないか。

 物語の主人公となるのは、ハツラツとした小学生と人気子役という2つの顔を持つ、倉田紗南。そして、紗南のクラスメイトで、超問題児の羽山秋人。この2人がぶつかり合いながらも、互いに心を通わせていく様子が軽いタッチで描かれている。

 この羽山は、教師ですらたしなめることができないほどの不良生徒。男子生徒たちを子分のように従え、クラスメイトはもちろん教師にまで嫌がらせをする始末。その結果、授業は滞り、クラスの雰囲気は最悪なものになってしまう。けれど、誰も羽山に歯向かうことができない。そんな状況を打破したのが、後先考えずに行動してしまう紗南。いい加減にしろ!と羽山への怒りをぶつけ、不穏な現状を変えようと躍起になるのだ。

 どうして羽山はこうも悪事を繰り返すのか。それには理由がある。それは、羽山の家庭環境の不和。羽山の母親は、彼を出産する際に、命を落としていた。それを「羽山のせいだ」と責め続ける姉。そして、子どもに一切関心を抱かない父親。こういった家庭環境が、羽山自身を蝕んでいったのだ。ところが、その状況を変えたのが紗南だ。羽山の家族に対して「バカ親子!」と啖呵を切り、彼の思いを代弁するかのようにぶつける。「家の中で悪魔悪魔って言われて育ったら、私だって本当の悪魔になっちゃうよ…!」。涙ながらに訴える紗南の姿に、ようやく改心した姉と父親は、羽山を受け入れるようになる…。

 家庭不和が少年の心に落とす影は、計り知れない。羽山が学校で暴れていたのも、彼なりのSOSだったのだろう。そして、それに気がついてあげるのが、ぼくら大人の役目ではないだろうか。

 物語は、そこから紗南と羽山のラブストーリーを中心に展開していく。そして、これが意外にも胸キュンの連続なのだ。子ども同士とはいえ、舐めてかかると、読みながら悶絶してしまうだろう。ちなみに、この羽山はいまだに人気があるキャラクターで、昨年の『an・an』(集英社)で特集された「抱かれたい男ランキング」に堂々ランクインしたのだ。約20年前のマンガキャラクターで、しかも小学生の彼が「抱かれたい」の対象になるなんて…。なんとも言い難いが、それだけ女性読者を惹きつけているということなのだろう。

 ということで、いま読んでも古さを感じさせない『こどものおもちゃ』。当時は子どもだった読者も、今度は大人として「子どもたちが抱える問題」に目を通してみてはいかがだろうか。そこに描かれているのは、いまこそ正面から向き合わなければならない“少年少女のリアル”なのだから。

文=前田レゴ