池上さんの“超訳”でよく分かる!「日本国憲法」の基礎知識

社会

公開日:2015/5/26

「基本的人権」こそ日本国憲法のハイライト

 中学校の公民の授業で、「基本的人権」というものを習ったはず。日本国憲法第3章第10から40条までと、かなりのボリュームを割いて表記されているが、これは基本的人権が日本国憲法のハイライトだから、と池上さんは語る。
それを集約しているのが第11条の「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」という部分であり、人が人として大事にされるように国家が保障するものが「基本的人権」なのだという。またこの権利は、続く第12条によって捕捉されている。

【日本国憲法 原文】
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない(以下略)。

 この憲法が保障する自由と権利は、「国民の不断の努力によって」保持しなければならないもので、権利の上に安住してはいけない、自由と権利を努力して守りなさい、というのだ。それを踏まえた上で、「どんな人が日本国の国民なのか?」が規定され、「国民は人種、信条、性別、社会的身分、家柄などによって差別されない」(法の下の平等)、「結婚は男女2人の合意で成立し、他人が口を出すことはできない」(逆説的に、同性婚は認めていない)、「最低限の生活を営む権利を有する」(せめて最低限の生活レベルは誰もが送れるよう、年金や生活保護などが用意された根拠)などが書かれている。

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憲法第9条を改定するため、まず第96条を改定する?

 現状、憲法第9条「戦争の放棄」にある「戦争」とは、すべての戦争を指すのか、侵略戦争だけであって「自衛のための戦争」は放棄していないのか、そこがよく論争されている点なのだという。したがって本著でも、「すべての戦争を放棄した」というものと、「自衛権は保持した」という内容の、2つの超訳ができてしまうことになるという。

 第2次安倍政権では、この憲法第9条を改憲するためにまず、改憲手続きを定めた第96条の「憲法改正のためには衆議院と参議院の3分の2の賛成で発議」という部分を、成立させやすくするために「衆議院と参議院の過半数の賛成で発議」という条項に変えてから、第9条を変更しよう…と考えているようだ。すでに自民党から出された改憲の草案には、「国防軍を保持する」という部分が明記されている。新法になると、国防軍が米軍とともに海外で戦闘に参加することが可能になるという。

「集団的自衛権容認」への方向転換は、立憲国家の考えに反する?

 第9条に「国防軍を保持する」と記載することは、憲法改正論者やメディアから「邪道だ」「裏口入学のようなものだ」などと叩かれたため、結局、第2次安倍政権では「国防軍を保持する」という表記から方向転換し、集団的自衛権が行使できるように閣議決定を進めようとしているという。安倍総理の集団的自衛権に対する発言はたびたびニュースで取り上げられているが、「私が政治の最高責任者。私が決めることができる。反対なら、次の選挙で政権交代させればいい」と言ったその意味は、「国民の代表だから、国民の意思を代行することで集団的自衛権を行使できるようにする」ということであり、これは近代の立憲国家の“権力者が勝手なことをできないように、国民が憲法で縛る=制約をかける”という考え方に反している、と本著には書かれている。

 先日、安倍総理は臨時閣議で、「安全保障法制の関連法案」を決定した。この中で決定されたのは、新法の「国際平和支援法案」と、自衛隊法など10本の法律の改正を一括した「平和安全法制整備法案」。これらによって、歴代内閣では認められてこなかった「集団的自衛権の行使」が可能となり、自衛隊の外国軍隊への後方支援や、国際平和協力活動などの分野でも活動の範囲や内容が拡大し、各方面で物議を醸している。こうなると、私たち国民も、「憲法って難しい」とか「選挙ってメンドクサイ」などと言っている場合ではない。まずは本著を読んで日本国憲法を理解し、自分たちの本意がどこにあるのかを見極めることが大切ではないだろうか。

文=増田美栄子