健康・美容

「娘の身体が壊れていく…」 子宮頸がんワクチンの副反応と闘う少女と母親たちの姿とは

 ただ事ではないことが、今起きている――。『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』(黒川祥子/集英社)を読んでそう思った。そして、テレビで見たことがある水俣病やイタイイタイ病などの公害病で苦しむ患者たちの姿、周囲の無理解による偏見や差別を思い出した。

 東日本大震災直後、日々放送されたACジャパンのCM。そのひとつに、仁科亜季子・仁美親子が出演し、子宮頸がんの怖さを訴えるものがあった(よく誤解されているようだが、ワクチン接種ではなく、検診をすすめる内容)。子宮頸がんは、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」によって子宮の出口に発生するがんで、発症率が高いのは20~40代の女性。日本では毎年約1万人が罹患しているという。この予防のために、製薬会社によってワクチンが作られたのだ。

 日本では厚生労働省が2種類のワクチンの製造販売を承認。2010年11月には「ワクチン接種緊急促進臨時特例交付金」が成立し、ワクチン接種は公費負担となった。そして、2013年3月にワクチンの定期接種化が決められると、女子中学生を対象に自治体や学校から接種をすすめる通知が配布されるようになった。母親たちは国がすすめるならばと思い、何より娘の将来を思って受けさせたのだろう。もしかしたら、繰り返し流された子宮頸がんを警告するCMの影響もあったのかもしれない。しかし、ワクチンの接種にサインをした母親たちは、後悔し自分を責め苛むことになる。接種後、重篤な症状が表れだしたのだ。

 最近、子宮頸がんワクチンを問題視する本が次々に発売されている。『子宮頸がんワクチン事件』(斎藤貴男/集英社インターナショナル)『新薬の罠 子宮頸がん、認知症…10兆円の闇』(鳥集 徹/文藝春秋)は、ビジネスのためにワクチンの危険性がスルーされていることを訴えたもの。そして、『子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち』では、フリーライターの黒川祥子さんが副作用に苦しむ6人の少女とその母親を数か月にわたり取材。その恐ろしい実態が浮き彫りにされた。

 少女たちの内の一人の母親は、「日に日に、娘の身体が壊れていくんです。身体にエイリアンが入って、娘をめちゃめちゃにしていく」とインタビューに答えている。本書に見られる彼女たちの症状は、いずれもまさにこの言葉の通りだ。まず、「ハンマーでどかんどかんと殴られる」と表現される頭痛。それから、手足がバタバタと勝手に暴れ出すといった不随意運動、突然意識を失う解離、しまいには母親のことさえわからなくなる記憶障害を引き起こす。このほかにも、痙攣、硬直、視覚障害、眼振、味覚障害、化学物質過敏、歩行困難、呼吸困難、嚥下障害など、挙げだしたらキリがない。少女たちは「いたい、いたい」と涙ながらに繰り返し、寝たきりを余儀なくされている。もちろん、学校には行けない。

 激痛に見舞われながら、さらに日に日に深刻化する症状に少女たちはおびえている。それだけでも、生き地獄のはずなのに、彼女たちが置かれている状況はもっと深刻だ。病院に行っても、まともな治療が受けられないばかりか、医者に相手にされず、ときには本人が演技をしているだけだと「詐病」を疑われることさえあるという。なぜならば、血液検査、頭部MRI、髄液検査、脳波など、さまざまな検査を受けても異常が見つからないから。思春期女子特有の精神的なものが原因とされ、心因性だと片付けられてしまう。

 2013年3月に発足した「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」は、厚生労働省にワクチンの危険性を訴え、副作用が出ている人への経済的援助を求めているが、厚労省は「因果関係は証明されていない」とする。だから、本書に登場する少女たちは多彩な症状におびえつつ、心の問題が原因ではないことを証明するために人一倍強くあろうと必死だ。

「ワクチンのことで今、心が鬱みたいになっているのに、もしこれで自殺とかして死んじゃったら、厚労省の人たちは(中略)症状そのものが心因的だったって思っちゃったら、その人たちの思うつぼだから、どんなに苦しくても生きるって決めた」

 6人の少女たちの言葉はいずれも大人びていて、強い。周囲に弱さを見せることは、彼女たちに許されないのだろう。国や病院、学校の先生、あまつさえ友達から、無理解による屈辱的な言葉を吐かれる悔しさを思うと、顔がゆがむの抑えられなかった。

 厚労省は現在、子宮頸がんワクチンへの積極的推奨を一時中止している。しかし、著者の黒川さんが厚労省に対して行った書面による質問に、彼らは次のように答えている。

「(厚生科学審議会の副反応検討部会において)子宮頸がんの予防という接種の有効性と比較衡量すれば、定期接種を中止するほどリスクが高いとは言えないと評価されています」
「審議会で引き続き検討し、積極的推奨再開の是非を判断することとしています」

 まずは、多くの人に彼女たちのような存在があることを知ってほしい。この現実を認めてほしい。それだけで、少女たちとその母親たちの精神的な負担を和らげることができるのではないだろうか。さらに、理解されることによってはじめて決めつけや偏見を取り除いたまっさらな状態で研究が進み、治療の進展にも結び付くはず…。そうして、彼女たちが一日も早くその苦しみから救われることを祈らずにはいられない。

文=林らいみ



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