痴漢はゲーム感覚?「チャットH」依存も増加中?「性依存症」のリアルとは

社会

2015/7/27

 ビル・クリントン元アメリカ大統領やプロゴルファーのタイガー・ウッズの愛人問題で知られるようになった「性依存症」。今月、盗撮行為で二子玉川駅のホームで女性のスカートの中を盗撮したとして書類送検された元・タレントの田代まさし氏についてもネット上では、「また盗撮だなんて…性依存症なのでは?」との憶測が広がっているが、実際に、「性依存症」がどのような病気であるのかは、知らない人も多いのではないか。

 精神科医・榎本稔氏による『性依存症のリアル』では、痴漢、露出、ストーカーなどの事例を用いて、加害者と被害者両面の現実に迫っている。何度捕まっても性犯罪を繰り返してしまったり、セックスに依存するがあまり正常な日常生活が送れなくなってしまったりなど、性依存者は自分でも知らず知らずのうちに性に溺れていっているようだ。

 たとえば、34歳の元システムエンジニアの男性は、仕事でストレスが溜まってくるにつれて、性欲のはけ口を求めるようになったという。仕事中であってもどうしても痴漢のイメージが頭をよぎってしまう。遅い時間に帰宅しても、寝付くことができず、明け方までアダルトサイトやオンラインポルノを見続けることもしばしば。そんな日々を繰り返しているうちに、朝の満員電車で自分でも意識しないまま痴漢行為に走ってしまったそうだ。ミニスカートでつり革を掴んでいる女性の背後に密着し、まずは単なるソフトタッチで様子を伺う。相手に拒む様子がなければ、スカートの中に手を侵入させ、下着に接触したり、さらに下着の中に直接手を忍ばせたりすることもあった。痴漢行為が常習化し、2年程が経った頃、はじめて警察に捕まり、罰金刑となったが、その半年後には再犯。昨年には強制わいせつ罪で逮捕され、現在では、性依存症の治療に専念している。痴漢行為に没頭していた時の彼にとっては、「痴漢は犯罪です」のポスターも車両の防犯カメラもまったく気にならなかった。それどころか、むしろ、痴漢行為を盛り立てるエキサイティングなものとすら感じていたという。性犯罪を「ゲーム感覚」と捉え、その背徳感に興奮を覚える性依存者も少なくはないようだ。

 インターネットの普及により、近年では、「サイバーセックス依存」という新たな依存者も生まれつつあるらしい。「サイバーセックス」とは、チャットやskypeなどのインターネットを介して別の場所にいる2人以上の参加者が互いに性的なメッセージを送信し合い、興奮を得るもの。「チャットH」「裏クチュ」などとも呼ばれているが、本当にセックスをしているような文章を打ち合うことでロールプレイング感を共有するのが魅力らしい。インターネットが人々にさまざまな出会いの機会を提供するなかで、「サイバーセックス」に生活が破綻するほどのめり込んでしまう者も少なくはないようだ。妻に離婚を言い渡されたり、のめり込み過ぎて会社に行けなくなったりする者さえいる。

 インターネットの影響など、性依存者をめぐる環境は日々変化している。榎本氏は、本書の中で、性依存症あるいは性犯罪問題は、懲役という矯正方法だけでは限界があることを指摘している。精神医療的なアプローチとの連携によって初めて性依存者の症状改善が可能となり、それは、性犯罪の再犯防止にもつながる。医療者がさまざまな変化に対し、柔軟に対応できる治療活動を展開していくことが求められることはもちろんのこと、性依存者が治療を受けやすい環境づくりも必要である。性依存症は時代を経るごとに変化しうる疾患。対応能力が求められている。

文=アサトーミナミ