ソフトバンク出身の著者が一発OKを勝ち取るプレゼン術を伝授 ―ただひたすらシンプルに!

仕事術

2015/10/2

 内容を読み手に分かりやすく伝えるということは、文章を書く上での基本といっても過言ではない。しかしやってみるとそれが意外に難しいということは、モノを書いた経験のある人ならば分かるだろう。書いていて主旨がだんだんブレてきたり、まとまりがつかなくなって書き直したりすることなど日常茶飯事だ。

 この「分かりやすく伝える」ということを、より極端に突き詰めた世界がある。それが「プレゼン」だ。プレゼンとはプレゼンテーションの略語で、企画会議などで自分の提案を周囲にアピールすることを指す。その結果、決済者が認可すればその提案が実現されるのだ。サラリーマン諸氏なら多くの人は経験しているだろうし、企画を通す難しさも重々承知のはず。何度も没になり、同期入社のエリートの企画が通ったりして悔し涙を流した人もいるかもしれない。

 そういった悩めるプレゼンターたちの力になってくれそうなのが『社内プレゼンの資料作成術』(前田鎌利/ダイヤモンド社)だ。かつてソフトバンクで多くのプレゼン一発承認を勝ち取った前田氏が、そのノウハウを包み隠さず教えてくれている。

 本書は基本的に社内プレゼンを前提とした実用本で、繰り返し述べられているのが「社内プレゼンは3~5分で終了する」ということだ。決裁者たちは多忙ゆえ、ひとつの案件に割ける時間は限られている。ゆえに長く時間をかけるだけで心象が悪くなってしまうというのだ。だからそのために「スライドは5~9枚にまとめる」とか「プレゼンはワンテーマに絞る」といった手法が必要になってくるのである。

 平たくいえば「シンプルに分かりやすくまとめる」というのが社内プレゼンの鉄則。例えば「キーメッセージは13文字以内にまとめる」とか、「ワンスライド=ワングラフ」で余計な数字や罫線はすべてカットするなど徹底した簡素化を推奨している。それらはすべて決裁者に自分の主張をひと目で分からせるためであり、決して手を抜いているわけではない。むしろ事前のデータ収集は徹底的に行ない、落としたデータはすべてアペンディックス(別途資料)にまとめることが重要だと解説。それによって提案内容にしっかりとした根拠を与え、あらゆる角度からの質問に対応できるようなプレゼンが可能となるのだ。

 とはいえ、やはりソフトバンク出身というべきか、内容としては基本的に大企業向けの社内プレゼン術という側面は強い。スライドを使った手法が前提であったり、パワーポイントなどのソフトの使い方みたいな項目もあり、人によってはまるで必要ない情報もあるだろう。そういう部分は読み飛ばしてしまっても構わない。要は、自らに有益なテクニックだけ活用すればいいのである。

 本書は、こと社内プレゼンに関しては著者の経験からくる情報が、これ以上なく簡潔に分かりやすく解説されている。そのあたりの知識が不可欠な職場にいる人たちには、間違いなく大きな武器になるだろう。では、それ以外の人には無用の長物なのかといえば、一概にそうともいえない。実際、文章を書く仕事に身を置く身としては、やはり文章をシンプルに、ムダを削ぎ落としていく技術は必要である。そういう部分とスライドを簡潔にまとめるという一連の流れは、共通項が意外に多いという印象を受けた。特に文字数の限られた記事を書くときには、「骨太な要素だけで構成する」とか援用できそうなテクニックもあったと思う。ムダを排してシンプルを目指すのは、どの世界にも通じる考え方だ。できればムダだらけだった私の人生も、シンプルにまとめ直してみたいものである。

文=木谷誠(Office Ti+)