不倫の予防法ってあるの?

恋愛・結婚

更新日:2016/1/13


『はじめての不倫学 「社会問題」として考える』(坂爪真吾/光文社)

 隣の家の奥さんが浮気した。仕事ができる既婚者の上司に誘われて、部下の女性が過ちを犯す。「まさかあの人が!」というような人が不倫にどっぷりとハマってしまう。下手な三文小説のような出来事は、私たちが知らないだけで、日常生活の中にありふれている。「不倫は文化だ」という言葉があったが、実は自由恋愛よりも不倫の方がずっと歴史が長いということを知っているだろうか?

 神話の時代から、今で言うところの不倫は行われていた。旧約聖書に登場する人物の中で一度も不倫を犯さずに、一夫一妻制を死守した夫婦はわずか1人しかいない。他の旧約聖書に登場する人物たちは、人々の模範となるべきなのに、妻を持ちながら他の女性とも行為に及んでいる。またインドの古典、今で言うところのセックス教本「カーマスートラ」には、他人の妻と行為を行うための章がある。私たちの社会において、太古の昔から不倫という問題はありふれている事柄なのだ。しかし、その抜本的な解決方法は、未だに見つかっていない。

 私たちは、一夫一妻制が大前提となる社会のルールの中で生きているのにもかかわらず、不倫のやり方に関しては詳しいが、不倫から自分の身と家族を守ることに関しては無知だ。『はじめての不倫学 「社会問題」として考える』(坂爪真吾/光文社)では、不倫という事柄を個人間の問題ではなく、社会問題として捉え、不倫の歴史や、不倫を行ってしまう人間の心理、そして不倫という恐ろしい病原体から自分を守る“予防法”が語られている。

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 大学教授や大手の会社の役員などが、部下やホステスとの不倫によって、その身を滅ぼしてしまうということは少なくない。彼らは不倫のリスクに関してよく知っているはずだし、社会的に自分が行った不倫によって、その立場を追われてしまうこともよくわかっているはずだ。それなのにもかかわらず、なぜ不倫という泥沼にハマり込んでしまうのか。それは、不倫というものが人間にとって抗いがたい欲求を満たしてくれるからにほかならない。

 不倫で夫以外の男性と行為に及んでしまい、罪悪感に打ちのめされるのでなく、不倫相手との行為に涙を流して感動する女性。不倫によって、自分の妻とは得ることができない満足感と快感にどっぷりとハマって、後戻りできない状況に陥ってしまう男性。。社会的な立場を忘れて不倫をしてしまうのも、夫以外の男に抱かれて妻が悦ぶのも、不倫という行為が人間にとって恐ろしいまでに快感を与えてくれる“病気”だからだ。その病気から身を守ることは、決して簡単なことではない。不倫のリスクを知っていたとしても、不倫を防ぐことにはならない。

 それでは不倫から自分の身を守るためにはどうすればいいのだろう? 本書ではそのためのヒントがいくつか紹介されている。セックス抜きの異性の友だちを作ることや、複数の相手に恋をすることなど、私たちが思いもよらない世間一般の「夫婦間のコミュニケーションを大切に」というキレイ事だけでない、不倫の予防法を知ることができる。ただし、これはあくまで予防法であり、不倫の絶対の解決法ではない。不倫は病気と同じであり、ワクチンや手洗いうがいで、ある程度予防はできるものも、絶対的な不倫という“病気”を防ぐ方法はないのだ。どれだけ健康に気を使っていても、誰もが風邪を引いてしまうように。

 ただ不倫をしないため、させないために本書を読むことは重要だ。不倫という病気に自分がかかってしまわないためにも、不倫というものがいったいどういったもので、それを防ぐにはどうすればいいのかを知識として知ることは不倫の予防に十分になる。すでに配偶者がいる方や、将来を考える恋人がいるという方は、自分だけでなくパートナーと一緒に本書を読み、お互いに不倫について勉強してみてはいかがだろうか。本書を読めば100パーセント不倫を予防するという保証は残念ながらできないが、不倫に対する免疫力を高めることができることだけは確かだ。

文=山本浩輔