不思議を知れば、ますますいとおしく 科学的な思考で猫をひもとく『猫はふしぎ』

暮らし

2015/11/19


『猫はふしぎ』(今泉忠明/イースト・プレス)

 日本人と猫との関わりは、史料が記録するところによれば、少なくとも約1200年前の平安時代にまでさかのぼることができます。1000年以上、日本人は猫の近くにいるというのに、いまだにその生態は解明しきれていません。しかも知れば知るほど、謎は深まるばかり。現代においては、ネットユーザーと猫との相性の良さも、不思議の一つとして、よく取り沙汰されています。最近では猫の飼育数が、犬の飼育数をついに越えそうだというニュースもあり、猫への関心は高くなりつつあるといえるかもしれません。

 関心を持ち、観察を重ねると自然に生じるのは疑問であります。生じた疑問についてグーグルさまに伺うのも悪くありませんが、ネットに散らばる有象無象の怪しい猫知識に翻弄される前に、一度目を通してほしいのが、この『猫はふしぎ』(今泉忠明/イースト・プレス)。科学と史料、そして文献に基づいた猫生態を学べる一冊です。手にとってちらりと中を垣間見れば、猫とともに暮らす身でありながら「猫への勘違い」がいかに多かったか、自ら反省したくなるほどであります。

「ネコは人間の言葉をほとんど理解できません。しかし、短い単語、声の強さ・弱さ、そのときの飼い主の様子などから意味を察知できるネコはいます。条件反射の一種であり、動物芸に近いですが、私たちはネコに対してはそれで良いのだと思います。」
P151より

 猫とともに暮らす人間は、よく「人間の言葉がわかる」と思ってしまうものですが、猫は言葉の意味を察する代わりに、全身の感覚器をフルに使って、人間の様子を察知しているわけです。生きるための狩りに使う能力で察知するわけですから、言葉の内容で察知する能力を発達させた人間とは、比べものにならない高感度なはずなのです。

 これと釣り合うには、人間のほうが、猫の様子を察知する感覚を研ぎ澄まさなくてはなりません。これこそが、猫が飼い主に対して優越している理由なのではないかと思われます。

 『猫はふしぎ』では、そんな至らない人間たちのために、猫の感情を正しく理解するコツにも、ちゃんと触れられています。声にならない猫の声を聞く”聴覚”を求める人に、おすすめしたい本であります。その聴覚を得たら、ますます猫がいとおしくなること、間違いありません。

文=猫ジャーナル

イラストレーション/坂木浩子(株式会社 ぽるか)