紙のマンガは消滅する!? デジタル時代におけるマンガのあり方とは

マンガ

公開日:2015/12/28


『マンガの現在地! ―生態系から考える「新しい」マンガの形』(島田一志+編集部/フィルムアート社)

 我が家の室内をざっと見渡してみると、マンガ本だけでおそらく500冊以上あるだろう。それが本棚だけでなく、あちらこちらに点在しているのだから、そりゃ部屋も狭くなろうというものだ。狭くなるだけならいいが、あまりに書籍を貯め込みすぎて、床が抜けたという話も聞く。まあこれが紙の本が持つ、いわば「宿業」なのだが、最近の出版界、特にマンガ界の事情は徐々に変わりつつあるようだ。

 変化するマンガ界をテーマに、新しい「マンガ」の形を模索しているのが『マンガの現在地! ―生態系から考える「新しい」マンガの形』(島田一志+編集部/フィルムアート社)だ。この本は島田一志氏ら編集者や翻訳家、マンガ家たちがそれぞれの立場から、マンガ業界の今後を多角的に予想している。

 まず本書の全体的なムードとして漂っているのは、「紙のマンガ誌はもはや限界」だということだ。例えば日本で一番売れているマンガ週刊誌『週刊少年ジャンプ』は、1995年には発行部数が653万部を記録したのだが、現在は240万部程度にまで落ち込んだ。多くの論者が、ここから紙の本が復権を果たすことはないだろうと推測している。では代わりに、何が勢力を拡大するのかといえば、それは「デジタル書籍」だ。単純な比較はできないが、2006年は200億にも満たなかった売上が、2014年には1200億円を超えるまでに成長している。現状、まだ紙の本が販売のメインなのだから実感のわかない人も多いかもしれないが、数字にはハッキリと現れているのだ。

 そして電子書籍が発展することで、マンガ家のマンガに対するアプローチも変化していくと本書は解説する。島田氏は、現在のマンガの形式である右開きで右から左に読んでいく形は、紙の本に最適化されたものだという。現在の電子書籍やWEBコミックも同様の形式が多いが、これも紙で単行本化することを前提としているからだ。しかし「紙」という前提をなくしてしまえば話は別である。島田氏は縦スクロールで読ませるマンガに興味があるという。PCやスマホは縦スクロールのスタイルが多いため、それに適した演出のマンガが生まれるとしている。4コママンガもスタイルとしては縦読みなのだが、演出は従来のマンガを踏襲しているといっていい。そういうものではなく、まったく新しい、縦読みならではの読ませ方をするマンガの登場を期待しているのだ。

 掲載される媒体が変わるならば当然、マンガの作画方法も変化する。かつては紙の上にGペンを走らせていたマンガ家も、今ではペンタブレットを使い、PC上で作画を行なう時代に。モノクロのマンガに色彩感覚を与えるため生まれたスクリーントーンも、カラー前提のWEBでは必要ない。発表の場も変わってきている。かつては出版社に持ち込んだり、マンガ賞に投稿したりしてデビューしていたが、今では自身でサイトを立ち上げ、自らのマンガをアップすることが可能だ。面白ければネットを通じて話題が拡散し、大手出版社の目に留まることも珍しい話ではなくなっている。マンガ業界を取り巻くすべてにおいて、変革の波が押し寄せてきているのだ。

 紙の雑誌や単行本で育ってきたからというわけではないが、個人的には紙媒体がデジタル媒体に席巻される未来など想像がつかない。しかし現実として、過去にレコードやカセットテープ、ビデオデッキが新たなメディアに淘汰されていった。上記のメディアが全盛期の頃には、誰もそんな未来を想像していなかったに違いない。だからいつか「本」という紙のメディアがなくなったとしても、驚くべきことではないのだろう。そのとき、悲しむのではなく、よかったと思えるようになりたいものだ。そう、部屋からあの本の山が消えてなくなれば、スペースが広くなって万々歳だ! ……ちなみに、レコードとかカセットテープとかビデオテープとか、いまだに全部残してありますが。

文=木谷誠(Office Ti+)