本選びに悩んでいる人必読! 100以上の書籍からお気に入りの一冊を見つけてみよう

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16


『世につまらない本はない(朝日文庫)』(養老孟司、池田清彦、吉岡忍/朝日新聞出版)

 読書は好きだけれど、いつも同じようなジャンルや作家の本を選んでしまう。新しいものに挑戦したいけれど、どうやって選べばいいか分からない。こんな悩みを抱えている人は、意外と多いのではないだろうか。「今日こそは、普段読まないような本に挑戦しよう!」と意気込んで書店やネットで本を探しても、結局冒険できずに、いつもとあまり変わらないチョイスになってしまう人。そもそもあまり読書をしないので、話題の書籍以外はよく分からないという人もいるだろう。

 もしあなたが本選びで悩んでいるなら、『世につまらない本はない(朝日文庫)』(養老孟司、池田清彦、吉岡忍/朝日新聞出版)がオススメだ。本書は二部構成になっており、第一部では解剖学者である養老氏が脳のはたらきという観点から「養老流」本の読みかたを紹介。第二部では「バカにならないための本選び」と題して養老氏、養老氏の「虫仲間」の生物学者である池田氏、ノンフィクション作家の吉岡氏の3名がテーマごとにお薦めの本を3冊ずつ挙げている。

 今回は、本書で取り上げられている本を一部ご紹介したいと思う。テーマは「科学を楽しむ本」。近年、日本人のノーベル賞受賞が相次いだこともあり、科学に関する話題が増えている印象を受けるが、この機会に本でも科学を楽しんでみよう。このテーマで池田氏が推薦するのは、この数年間で一番面白かったという『脳のなかの幽霊(角川文庫)』(V・S・ラマチャンドラン、サンドラ・ブレイクスリー:著、山下篤子:訳/KADOKAWA)。医師であり神経科学者である著者が脳の不思議に迫る一冊だ。切断されて存在しない手や脚をあるように感じる症状などから、我々が現実だと思っていることは、あくまでも脳の中の現実だということが分かる。

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 一方で、養老氏と吉岡氏が選択したのは『黄砂 その謎を追う』(岩坂泰信/紀伊國屋書店)。黄砂は有害なものというイメージがある中、様々な汚染物質を吸着して自然を浄化してくれる存在という視点で書かれている。一粒は目に見えないくらい小さな黄砂が、地球環境を左右しているかもしれないとは、なかなか興味深い。ただ、著者が科学者であり、比較的専門性が高い内容なので、気合を入れて読む必要がありそうだ。

 次なるテーマは「マンガ」。実は、養老氏は京都国際マンガミュージアムの館長を務めている。ちなみに、このミュージアムは、“マンガの収集・保管・展示およびマンガ文化に関する調査研究及び事業を行うことを目的としている”とのこと。まず、吉岡氏が選んだのは『カムイ伝(小学館文庫)』(白土三平/小学館)だ。江戸時代の士農工商に属さないような、最下層の人たちの視点で描かれており、民俗学や歴史学の要素も入っている。

 池田氏のチョイスは『海辺の叙景』(つげ義春/筑摩書房『つげ義春全集4』)。男女の関係を描いた作品で、ラストシーンで主人公の男性が女性のために泳ぐシーンが印象的とのことだ。一方で、ミュージアム館長の養老氏は、医学部時代は忙しくてマンガを読む時間もなかったそうだが、大学院生の時に出会ったのが『伊賀の影丸』(横山光輝/秋田書店)。ここから、マンガに熱中していったようだ。

 これは、本書で取り上げられている書籍のごく一部。実際には、100点以上が紹介されている。「勝手にノーベル文学賞」「価値観変える本」「太宰と安吾」「ミステリー」など、多岐にわたるテーマで、堅いものから比較的読みやすいものまで、実に幅広いセレクションとなっている。次に読む本を探している人はぜひ、本書を手にとってみてほしい。その中から、お気に入りの一冊が見つかるかもしれない。

文=松澤友子