一夜限りの関係のつもりが結婚に！？　大人のラブコメ『オットに恋しちゃダメですか？』

　女にだって性欲はあるし、気持ちよくもなりたいし、やりたくてたまらない日もあるんだ～～!!!!　なんて言おうものなら「まあなんてはしたないの！」と同じ女にさえ白けた目を向けられていた昔と違い、「そうだそうだ！ 女だって積極的に楽しんでいいんだ！」という声が強くなってきた現代。ともすると「女だってそうするべきよ！ ほら、解放して！　さらけ出して！」と極端に走ってしまいがちですが、男だってやりたい奴はやりたいし、欲が薄い奴は薄い。女性だって同じで要は「好きな人と性の価値観がずれるとしんどい」ってことだと思うんですね。

　『オットに恋しちゃダメですか？』（藤原晶/白泉社）の主人公・あかねもそう。一晩に何回も何回も試合をしたい彼女に男たちは軒並みドン引き、かわいいし性格もいいしモテるのにいつも彼氏に逃げられるという悩みを抱えていました。

今までエッチで満足出来た事はなかった　でも相手に嫌われたくなくて　
そんな事　絶対に言えなかった

　これって多かれ少なかれ女性が抱きがちな悩みなんじゃないかな～。相手が好きな人ならなおさら。それは女性だけの悩みじゃなくて、社内で噂のイケメンエリート、通称「王子」の拓也もまたしかり。尋常じゃなく性欲が強い上にモノが大きすぎて女性とうまく関係が築けないことに絶望していた彼が、バーで偶然出会ったのがあかね。だからこそ、生まれて初めて“やりたい放題のセックス”を経験した彼は、これぞ運命とばかりにあかねに結婚を申し込むのです。「確かに俺達の間には恋愛感情はない　だけどもっと盤石な関係が築けると思う」と。

　とはいえ、人生を共にするとなると身体の相性だけじゃ成り立たない。しかもあかねは拓也のことが本気で好きになってしまう。拓也はあかねにパートナーとしての愛情以上の気持ちを抱いていないのに。さらに複雑な生い立ちのせいで、拓也は「子供はほしくない」し「他人を心から愛せない」と闇を抱えていることが判明して……。と、そこでタイトルの意味がようやくわかってくるわけです。

　2人のアクロバティックなイチャラブを堪能する大人のラブコメでありながら、人を愛せない夫の心をまっすぐで純真なあかねが少しずつ解いていく切ない“愛”の物語でもある本作。発売されたばかりの最新4巻ではようやく、拓也の心を縛っていた過去のトラウマに決着がつきます。生まれて初めて心からの愛を手に入れた拓也が、思う存分でろでろにあかねを甘やかすさまにニヤニヤしつつ、5巻で新たな試練が訪れそうな気配にどうぞやきもきしてみてください。

文=立花もも