“揚げ物”弱小野球チームの“本気プレイ”がシュールすぎる! 大人がハマる絵本『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』

文芸・カルチャー

2016/2/25


『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』(岡田よしたか/ブロンズ新社)

赤い野球帽をかぶったエビフライとアジフライが、「やきゅうやれへんか?」と空き地で声をかけます。集まってきたのは、オニオンリングにフライドチキン、イカリングにフライドポテトにコロッケ。そう、みんな「揚げ物」。『ケチャップマン』(鈴木のりたけ)をはじめ、大人の心にも響くシュールな絵本が人気のブロンズ新社から発売された『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』(岡田よしたか)は、揚げ物ばかりの野球チーム「うまいもんフライヤーズ」が、隣町のチームとの試合に向けて野球の練習に励むという、言うならば「食べ物スポ根」絵本なのです!

その練習風景は、すこぶるシュール。イカリングがボールを受けようとしたらボールが穴を通り抜けてしまう、フライドポテトは5本ひとくみでグローブに入ってボールを上手にキャッチできるけど入るのに時間がかかる、動きすぎてエビフライの衣がはげてしまう…。読んでいるとついクスクスと笑ってしまうのですが、揚げ物たちはいたって真剣! そのギャップというか、独特のテンションにまた笑いを誘われるのです。

作者の岡田よしたかさんは、身近な食べ物を主人公にした絵本作品を数多く発表しています。『ちくわのわーさん』『うどんのうーやん』『こんぶのぶーさん』は、それぞれの主人公が他の食べ物に出会ったり、話したりしながら物語が展開していきます。おもしろいのは、これらのすべての登場人物に、目も鼻も口もないのです。これまでにも食べ物が登場する絵本はたくさんあると思いますが、基本的には擬人化されて、目鼻口や、何なら体なども追加されて、絵本の中のキャラクターとして存在しています。ところが、岡田さんの作品は、食べ物がそのままの形で、動いたり話したりするのです。ちくわがクネクネ動いたり、うどんが器から飛び出したり、エビフライがしっぽでグローブを持ったり、コロッケが全身でボールを受け止めたり、もう何でもありです!

岡田さんはインタビューで「食べ物を写生するイラストを描いていて思いついた。目鼻手足をつけて描いたこともあるけど、どうも類型的だなと感じて、何より実物を描いた、その絵のほうがおもしろいと思った」と語っています。

確かに。食べ物にあえて顔をつけないことで、これまでに見たことがない、奇妙なおもしろさを生み出しています。けれど、登場する食べ物たちには、ちゃんと性格があり、独特の動きをします。擬人化されていないにもかかわらず、この躍動感が表現されているのは、よくよく考えるとすごいことなのではないか! 読めば読むほど、魅力的な食べ物たちの虜になってしまいました。

このおもしろさを我が子にも知ってほしい! ということで、娘3歳にも読み聞かせてみました。最初はこのシュールな世界観が理解できなかったのか、きょとんとしていた娘。ところが、途中から揚げ物たちの軽快なやりとりにニコニコし始め、「エビフライさん帽子かぶってるね」「コロッケさんボール取ったね」と言いながら、楽しんで読んでいるようでした。子供にとっても、身近な食べ物が登場する絵本は親しみが湧くようです。

うちの娘はまだ幼く、お話の中で理解できない部分も多かったようなので、小学生ぐらいの大きなお子さんにもオススメです。揚げ物の種類と特徴がよくわかるようになってからはより楽しめるはず。イカリングやオニオンリングが体をよじってボールをキャッチできるようになった時の、やったね! 感を早く娘と一緒にわかち合いたい(笑)。

シュールながらも、揚げ物たちのひたむきさに、大人も夢中になって読んでしまう『ぼくらはうまいもんフライヤーズ』。ぜひ一度手にとって、この不思議な魅力にハマってください!

文=野々山幸