あなたにとって、それは本当に「幸せ」ですか? 少年と天使の「シアワセな」出会い

マンガ・アニメ

2016/3/4


『プラチナエンド』(原作:大場つぐみ、漫画:小畑 健/集英社)

 ついに、『プラチナエンド』(原作:大場つぐみ、漫画:小畑 健/集英社)が単行本化した。大場つぐみ原作、作画小畑健のこの二人は、言わずと知れた『DEATH NOTE』『バクマン。』をこの世に生み出した最強コンビである。

 今回は、少年と天使のお話だ。ハートウォーミングなラブコメ話か? と思いきや、どうもそうではないらしい。

人は誰しも幸せになるために生まれ 人は誰しもより幸せになるために生きている

 これが物語の主題らしい。やや哲学チックな物語の始まりである。

 主人公は架橋明日(かけはしミライ)という中学生3年生の少年。彼は7歳の時に事故で家族を亡くし、親戚に預けられる。そこでの生活は「奴隷以下」で、家事雑用にこき使われ、日常的に虐待を受けていた。

 中学を卒業した明日は、高校にも行かせてもらえない現実を嘆き、自殺を図る。「幸せになりたかった」。明日が飛び降り自殺する前に呟いた言葉は、彼の本心だっただろう。

 しかし、死ぬ直前に現れた天使ナッセにより、明日は救われる。

「死にたいんだよ」と訴える明日に、ナッセは「生きる希望」と称して「天使の翼」と「天使の矢」を授ける。翼はどこにでも行ける「自由」を。矢はキューピッドの矢のようなものらしく、刺した相手が自分を好きになってくれる、つまり「愛」を与えてくれるものなのだ。

 今まで虐げられ、何も持っていなかった中学生の明日に、突然もたらされる究極の「自由」と「愛」。

 天使のナッセは「これで幸せになれるでしょ?」と満足げだが、明日がほしい「幸せ」はもっと平凡なものだった。

寝る場所があって 食べる物があって 学校に行けて 社会で働けて そしていつか将来好きな人と一緒になって その人と幸せな家庭をつくれたら――

 それが明日の幸せであったが、天使の感覚は少しずれているらしい。「お金がほしいなら、育ててくれた叔父さんと子供たちを殺しちゃえば?」と言ってのけたりする。これには様々な事情がありナッセの発言につながっているのだが、それでも明日は、「盗んだもの騙し取ったもので幸せは感じられない」とナッセを説得する。

 その後、誰かを傷つけるのではなく、奪うわけでもない天使の力の使い方で、明日は無事に高校に入学を果たす。「これから普通の学生生活を送れる」「やっと幸せになれる」はずだったが、物語は明日を簡単には幸せにしてくれない。

 明日の前にナッセが現れたのは、「神候補」を探すため。

 13の選ばれた天使が、それぞれ人間を神候補として「天使の力」を授ける。その中の人間一人が神となり、選んだ天使は、天使の業を終え、その神になった人間の近くで安らかに過ごせるのだとか。

 知らぬ間に神候補に選ばれてしまった明日。それだけでも「平凡な幸せ」からは遠のいてしまうのに、なんと、神候補に選ばれた人間が、他の候補者に殺されるという事件が起きる。

 候補者の中には自分が神となるために、他の候補者を殺すという手段に出た人間がいたのだ。しかも、入学した高校には他にも神候補の人間がいて……? というのが、1巻までの内容だ。

 ナッセに出会うことで「生きる希望」をもらい、「幸せに生きること」を求めはじめた明日だったが、そのことから命を狙われるようになる。ただ平凡な生活を送りたいだけの少年は、知らぬ間に熾烈な争いに巻き込まれてしまったのだ。

 人間にとって、本当の幸せとは何か? 明日は幸せになれるのだろうか?

 息つく暇のない急展開に次ぐ急展開の本書、第2巻は5月に発売予定だそうだ。続刊を楽しみに待ちながら、本当に幸せな生活とは何か、考えてみたい。

文=雨野裾