赤・白・緑…いろんなボルシチを食べたい! まるまる一冊ロシアのスープの本【作ってみた】

食・料理

公開日:2016/3/6


『ロシアのスープ』(荻野恭子/WAVE出版)

 ロシア料理、と言われて真っ先に思い浮かぶものといえば、「ボルシチ」。赤い色のスープにサワークリームがのったスープを想像する。

 そんなボルシチは『ロシアのスープ』(荻野恭子/WAVE出版)によると、ウクライナの郷土料理。ウクライナ、ベラルーシ、ロシア3国の共通の祖国・キエフ大公国が、9世紀後半~13世紀にウクライナのキエフに首都を置いていたため、ロシアにも浸透したそうだ。

 さらに、ボルシチは赤いものの他にも様々な種類があるようだ。ボルシチ=赤いという常識を覆され、他のボルシチもぜひとも食べてみたくなった。本書はタイトル通り「ロシアのスープ」の本なので、他にもいろいろなスープが掲載されているが、今回はボルシチに絞って作ってみようと思う。

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まずは基本! 「ボルシチ」(P.12、P.14)


 誰もが思い浮かべる赤い「ボルシチ」。金時豆、豚肉を煮込んだものに、バターでサロ、ビーツ、玉ねぎ、にんじん、トマトを炒めたもの、じゃがいも、キャベツを加えてさらに煮る。それに塩コショウ、ローリエ、にんにく、ハーブを加えて味を調え、サワークリームをのせれば完成。

 ロシア料理でハーブと言えば、ディル、イタリアンパセリ、万能ねぎが基本だそう。サロは、豚バラ肉の塊に塩、砂糖、コショウをすり込んで冷蔵庫で2~3日置いたもの。パンチェッタでも代用できるようだ。

 筆者、実はビーツを初めて使ったのだが、驚くくらい濃い赤で、一緒に炒めた野菜やスープが一瞬で真っ赤になった。食感は芋のような感じ。味付けは至ってシンプルだが、肉と野菜の出汁で奥深い味わいに仕上がっていた。

酸っぱくて白い! 「白ボルシチ」(P.20~21)


 続いて、言われなければボルシチとは思えない「白ボルシチ」。まず、ライ麦粉とぬるま湯、酢、塩、砂糖を合わせて発酵させた「ジューレク」を作っておく。豚肉、フランクフルト、戻した干しきのこ、にんじん、セロリ、にんにく、ジューレクを鍋に入れ、煮る。オールスパイス、マジョラム、ローリエ、塩コショウを加え、みじん切りにした玉ねぎ、サワークリームを混ぜ合わせれば完成。

 ジューレクの酸味と肉、フランクフルトの旨みが合わさり、食欲をそそる味。玉ねぎのシャキシャキした食感も嬉しい。溶き卵を加えるのではなく、刻んだゆで卵を散らすスープというのが斬新だ。

これもボルシチ!? 「緑ボルシチ」(P.22~P.23)


 最後は、「緑ボルシチ」。鍋に手羽元、米、水を入れて煮込んでブイヨンをとり、炒めた小松菜、玉ねぎを加える。酢、塩コショウで味を調えてさらに煮込み、サワークリームとハーブを散らせば出来上がり。本来は、ロシアに自生しているシャベーリという野草を使うそうだが、日本では入手が困難なため、小松菜と酢で代用しているとのこと。シャベーリ自体に酸味があるので、これを使う場合は酢は入れないそうだ。

 手羽元の出汁とお米のとろみ、酢とサワークリームの酸味で、旨みがありながらもさっぱりとしていて、とても食べやすかった。

「サロ」や「サワークリーム」の作り方は本書でも見られるが、『ロシアの保存食』(荻野恭子/WAVE出版)により詳細な作り方が掲載されている。サワークリームは市販のものを使うのもありだが、ヨーグルトと生クリームを混ぜて手作りすると、より本場の味になるとのこと。

 また、『ロシアのパンとお菓子』(荻野恭子/WAVE出版)も発売予定。どの本も、ロシアの、本物の味を追求したレシピとなっている。今までロシア料理になじみがなかった人も、この3冊でロシアの食文化を感じてみてはいかがだろうか。

文=月乃雫