野村萬斎・雨上がり宮迫博之の新・名コンビで映画化! 「モノに宿る記憶を読み取る能力」で捜査する失踪事件の結末とは

文芸・カルチャー

2016/4/6

化学反応はいつも、意外なものの掛け合わせによって起こるものである。この春、想像だにしなかった組み合わせのコンビが、世の中を席巻しそうだ。そのコンビとは、狂言師・野村萬斎と、雨上がり決死隊・宮迫博之。4月29日より公開される、映画『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』にて、主演を務める2人だ。

『スキャナー』は、『ALWAYS 三丁目の夕日』『探偵はBARにいる』などで知られる人気脚本家・古沢良太によって書き下ろされた異色の謎解きミステリー。狂言とお笑いという普段は異なる分野で、それぞれ第一線で活躍する野村萬斎と宮迫博之は、これをどのように演じるのだろうか。2人の掛け合いは想像したこともなかったが、何やらとんでもない化学反応を起こしてくれそうである。映画公開に先がけ、『小説版 スキャナー』(集英社文庫)も発売。映画公開前にもかかわらず、その内容に大きな注目が集まっている。

主人公は、物や場所に残った人間の記憶や感情(=「残留思念」)を読み取る特殊能力をもつ仙石和彦。かつてはその能力を使って、相方・丸山竜司とともにマイティーズというお笑いコンビで活躍していたが、その能力ゆえに神経をすり減らし、現在は、マンションの管理人としてひっそりと生活。相方・丸山もピン芸人として鳴かず飛ばずの日々を送っている。そんなある日、仙石の力を頼って、女子高生ピアニスト・秋山亜美が2人の前に現れ、仙石たちに、行方不明となったピアノ教師・沢村雪絵を探してほしいと依頼する。初めは、とんでもない依頼に難色を示す彼らだったが、次第に2人は事件に巻き込まれていく。そして、彼らを待ち受けていたのは、あまりにも切ない事件の真相だった…。

にじみ出るような強い思いが、人間の身体から飛び出して、記憶のカケラとして「モノ」に宿っていたとしても不思議なことではない。仙石は手に触れた「モノ」に残った人間の記憶や感情を見ることができるのだ。しかし、この能力によって、人間の嫌な部分ばかりを見てきた仙石は徹底的に人間を嫌うようになっていた。能力を使わずにすむよう、真夏だろうが、マスク、革の手袋、厚手のコートという格好で、ペットの熱帯魚としか関わらないように暮らす超変人の仙石は、「人間嫌い」にもかかわらず、人探しに協力せざるを得なくなる。

そんな彼が唯一本音でぶつかれるのが、相方の丸山だ。別段能力があるわけでもない口の回るだけの男だが、見たくない「残留思念」を見ては神経をすり減らし、常時ネガティブ思考に陥っている仙石を彼なりに気遣っている。口悪く仙石を罵倒し、対立し合う2人だが、結局、根の部分では、信頼し合っている2人のコンビ愛が胸に沁みる。

「残留思念」が何もかも見えてしまうならば、人探しなど容易なことのように思えるだろう。普通の事件捜査だったら、事件を目撃した証人を探すことから始めなくてはならないが、モノに宿った「残留思念」を読み取れる仙石は、事件現場に赴けば、その場で何が起こったのか、その記憶のカケラを辿ることができる。だが、いつでも簡単に記憶を拾えるわけではないし、そこに残されているのは誰の記憶なのかわからない。そして、過去を一番手軽に記録しうるものは、人の記憶に違いないが、人の記憶ほど容易く嘘をつくものもない。瞬間的に湧き出た感情はすべてホンモノかもしれないが、人は過去を自分の都合のいいように書き換えてしまう。おまけに、事件について必要以上に詳しく知る2人は、警察から疑われたり、犯人に襲われたり、息もつかせぬ、いろんな展開に襲われる。

予想を裏切り続ける緊迫した展開と、噛み合わないようで思い合っているキャラの濃い凸凹コンビ。映画とともに、ぜひともみてほしい。新しい探偵の誕生、新しい名コンビの誕生にあなたは度肝を抜かれるに違いない。

文=アサトーミナミ

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