ストーカーは治療が必要な脳の病気!「執着型」「求愛型」「一方型」3つの“ストーカー加害者心理”のリアルを暴き出す

社会

2016/4/15


『ストーカー加害者 私から、逃げてください』(田淵俊彦、NNNドキュメント取材班:著/河出書房新社)

 3年連続で2万件超え――。これは2013年から15年にかけて、警察庁が把握した「ストーカー事案」の認知件数だ(警察庁の統計資料より)。このストーカー認知件数は、2000年11月に通称「ストーカー規制法」が施行されて以降、2012年までは毎年1万件台だった。つまりここ数年、ストーカー事案は増加傾向にあることがわかる。

 取り締まりが厳しくなっても、なぜストーカーは増え続けるのか? そもそもストーカーにはいったい、どんな心理が働いているのか? 新たな被害者を生まないようにするためには、どんな働きかけがストーカー加害者には必要なのか?

 こうした疑問を解決すべく、加害者たちへのインタビューと、加害者をカウンセリングや心理プログラムで更生させようとするカウンセラーや精神科医などへの取材を通して得た知見をまとめたのが、本書『ストーカー加害者 私から、逃げてください』(田淵俊彦、NNNドキュメント取材班:著/河出書房新社)だ。

 本書は、日本テレビ系列の報道番組『NNNドキュメンタリー』で、2014年11月30日に放送された「迷路の出口を探してI  ストーカーの心の奥底を覗く」の内容に加筆され書籍化されたものである。

40代前半の独身OL。元カレへの「執着型」ストーカー

 本書には、3名のそれぞれタイプの違う加害者が登場する。

 最初に登場する加害者は40代前半の独身OL。本書はこの女性を「執着型」と分類する。「執着型」は、元恋人など親密な人間関係が壊れた時にストーカーになるケースだ。この女性の場合、年上男性と知り合い交際に発展するが、後に男性が既婚者だったことが判明してストーカーに変貌した。

 女性は、相手男性に迷惑メールや電話を執拗に続け、「奥さんを殺す」と脅した結果、男性から訴えられ1000万円近い慰謝料を請求された。しかしこのケースでは男性にも問題はあった。普通なら、既婚者と判明した時点で別れる道を選ぶ女性は多いだろう。

 そこで本書に登場する女性カウンセラーは、この女性にこう尋ねる。

「あなたは(相手男性から)離れようと思ったんだっけ?」

 すると女性はこう答えるのだ。

「思わなかったですね。そこなんです、問題は。離れ方っていうか、人との別れ方を知らないんですよ。今の今まで。私は」

 別れるという選択肢がないため、ストーカーになるしかなかったというのだ。本書では、著者と女性カウンセラーが、この女性の心の深部にある闇を鋭くえぐり出す様子が収められている。そして著者は、この女性の特徴を以下の8項目にまとめた。本書ではそれぞれについて詳細な説明があるが、ここでは項目のみを紹介する。

1. いつも何かに脅えている
2. 好きだから相手を試す
3. 優位に立ちたい
4. 情が深く激しい
5. 人間不信である
6. 被害妄想が激しい
7. 怒りのスイッチが入りやすい
8.「生」に対しての執着が無い

50代後半の男性。同僚への「求愛型」ストーカー

 2人目の加害者は、50代後半の男性で分類は「求愛型」。ちょっとした知り合いがストーカーになるケースだ。この男性の場合は、会社の同僚女性に一方的に好意を抱き、電話で何度もデートに誘い、メールでプロポーズを繰り返すなどを行った。女性から告訴され、裁判で執行猶予付きの有罪判決を言い渡された。

 自分の行為について著者から言及されると、「私も(相手を)苦しめてしまったと思います」と反省の言葉がこぼれ出る。しかし「プロポーズをまたしたいと思うか」と問われると、「打ち解けて話ができるようになったらもう一度したい、幸せな家庭を築きたい」「誠意は伝わるはず」と答える。つまり、相手から自分が疎(うと)まれていることは、この期に及んでも認識できていないのだ。

 著者がまとめたこの男性の特徴は以下の通りである。

1. 何事にもこだわる 
2. 粘着質の性格 
3. 一途な性格 
4. 思い込みが激しい 
5. 被害妄想が激しい 
6. 不安や不満を持っていない 
7. 怒りのスイッチが入りやすい 
8. 孤立している

30代前半の女性。芸術家への「一方型」ストーカー

 3人目の加害者は、30代前半の女性で「一方型」という分類だ。加害者と被害者は面識がないケースが多い。この女性の場合は、ファンになった芸術家に一方的に関心を寄せ、迷惑メールだけでなく相手宅へ押し掛けるほどのストーカーとなった。

「いったい相手に何を望んでいるのか」と著者が問いただす。すると女性からは意外な答えが返ってくる。

「相手に対して何かを求めているというのは、ほとんど無いです」。

 芸術家を自分の中で理想像に作り上げ、その理想像にアピールすることが生きがいになっていた、というのだ。危険を感じた芸術家が引っ越し をしたため、自宅へ行くことはできなくなった。その心境を問われると、「逃げてくれて、助かった」と女性は答えた。

筆者がまとめたこの女性の特徴は以下の通り。

1. 考え方が幼な過ぎる
2. 相手を美化し過ぎている
3. 相手に何かを求めるという気持ちはない
4. 困らせてやろうという感情はある
5. 繋がっていたい
6. 自分がやっていることをよくわかっている
7. 自分の行動を止められない

「ストーカー病」は治療が必要な脳の病気

 これら3人の加害者たちのとった行動の詳細とその時の心理状態が、著者と心理カウンセラーの手によって次々と浮き彫りにされていく。男性加害者が、インタビュー中に突然人格が変わったかのように声を荒らげる様などは、まるでサイコ・スリラー映画を観ているかのような気分にさせられる。

 著者は話を聞くうち、加害者たちの心理や思考に、ある種の病理性が潜むことを察知する。その問題を明確にするため、加害者取材に続く章で著者は、精神科医の福井裕輝氏へのインタビューを行う。

 福井氏は、ストーカー行為を脳の病気と考え、「ストーカー病」と名付けた医師だ。その章において福井氏は、被害者を増やさないようにするためには「医師と警察が連携を図り、加害者に医療的・心理的治療を施すことが必要だ」と主張する。

 また別章には、高校生に対して「デートDV」やストーカー防止のためのプログラムを実施する専門家も登場する。その専門家が語るのは、高校生の恋愛であってもDVやストーカー被害の報告があるという事実だ。

 突然、他人事ではなくなるかもしれないストーカー問題。その加害者心理やストーカーを生み出す社会背景を知りたいという方、あるいは問題解決の糸口をすでに探しているという方、ぜひ、本書を参考にしてみてほしい。

文=町田光