少女の価値を世界に示せ! クールな暗殺教師と可憐な少女の成長を描く異世界学園ファンタジー『アサシンズプライド』

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15

人間の才能は生まれた時から決まっている。天才は生まれながらにして天才だ。だが才能に恵まれぬ凡人にも、天才に譲れぬ誇りがある。今回紹介するのは、才能なき凡人が意地と努力で運命に抗う物語だ。

アサシンズプライド 暗殺教師と女王選抜戦』(天城ケイ/富士見ファンタジア文庫)は、第28回ファンタジア大賞<大賞>受賞作。暗殺の特命を受けた暗殺教師と落ちこぼれ少女の成長を描く異世界学園ファンタジー。1巻発売早々、ライトノベルファンの間で大絶賛を浴びた注目作の2巻がはやくも発売された。

advertisement

太陽も月も星もない永劫の夜の世界。「マナ」を操る能力者たちは騎士として、暗闇に棲む怪物から都市と人々を守る責務を負う。メインヒロインである13歳の少女メリダ=アンジュルは、騎士の中でも別格の三大騎士公爵家に生まれながら、「マナ」を発現できない「無能才女」だった。

暗殺者クーファ=ヴァンピールは、そんなメリダを「暗殺せよ」との密命を帯び、家庭教師として送り込まれる。しかしメリダの真摯な決意に心を打たれたクーファは命令に背いて、彼女を守ることを誓う。もしも命令違反が発覚すればクーファ自身の命も危うい。2人が生き残るには、実績を積み上げ、己の価値を示すしかない。その日から、暗殺教師と無能才女の命がけの日々が始まった。

1巻では、マナ能力を目覚めさせ、クーファの特訓を経て新人戦で活躍したメリダ。

2巻では、「無能才女」と後ろ指をさしていた周囲の評価も少しずつ変わり、疎遠になっていた従姉妹のエリーゼとも仲の良い親友の関係を取り戻す。相変わらずメリダに容赦ないスパルタ教育を施すクーファが爽やかに鬼畜で、そんな過酷なトレーニングも健気に耐えてクーファに淡い想いを抱くメリダが愛らしい。特訓シーンも教師と教え子の秘密の逢引のように見えてしまうのが、この2人の微笑ましくてお似合いなところだ。

物語の舞台となる、メリダの通うお嬢様学校・聖フリーデスウィーデ女学院では、一大イベント《ルナ・リュミエール選抜戦》が開催される。姉妹校・聖ドートリッシュ女学園の代表選手と競い合い、最優秀生徒を選ぶ対校試合だ。そこで何者かの策略により、1年生のメリダとエリーゼが代表選手として出場することになってしまう。優秀な上級生を差しおいて、メリダが試練を勝ち抜ける可能性は低い。そう誰もが予想するなか、ただひとりクーファだけが不敵な笑みを浮かべる。

面白い。いったいオレを何者だと? 誰にも期待されていないからこそ、誰もが驚くような奇跡を演出できるのです

その言葉通り、メリダのパートナーとして試練に参加することになったクーファは身体を張ってメリダをサポートする。マナ能力者としては未熟なメリダだが、力不足を補ってありあまるクーファへの信頼を見せて奮闘する。そんなメリダを生徒たちも次第に認め、応援の声がひとり、またひとりと増えていく光景に胸が熱くなる。

しかし選抜戦の途中、仲良しだったメリダとエリーゼが、些細なすれ違いから大喧嘩に発展してしまう。さらにイベント中は完全閉鎖される女学校に、変装の達人である女暗殺者ブラック=マディアが侵入し、メリダとクーファを狙う。さまざまな登場人物の思惑が入り乱れ、選抜戦は混迷の一途を辿る。

幾多の熱戦が繰り広げられるが、個人的にはメリダとエリーゼの親友対決が一番の見所だ。ありのままの本音をぶつけ合い、真の友情で結ばれる少女たちの姿に思わず心を奪われる。可憐な乙女たちの誇りをかけた戦いの結末を皆さんにも是非、ご覧頂きたい。

文=愛咲優詩