悩みはお坊主さんに頼れ!クール系美坊主&チャラ美坊主の、のんびり下町人情物語

文芸・カルチャー

2016/5/5


『お坊さんとお茶を』(著:真堂樹/イラスト:木下けい子/集英社)

とにかく生きづらいこの世の中で救いを求めるならば、やっぱり悟りきった人がよい。「坊主Bar」や「坊主Cafe」が流行るのも納得。日夜修行に励むお坊さんならば、我々のモヤモヤとした日々に活路を見出してくれるに違いない。たとえば、禅宗では、師僧が弟子に難解かつ哲学的な問題「公案」について質問し、答えのない問題の答えを考え続けることによって悟りの境地を目指しているという。普段から難しい問題を考え続けている彼らならば、我々の悩みを解決することなど、もしかしたら簡単なことなのかもしれない。

真堂樹著「お坊さんとお茶を」シリーズ(イラスト:木下けい子/集英社)は、商店街の人々の悩みを個性豊かな美坊主たちが解決していくのんびり下町人情物語。ドジな主人公を取り囲む2人の美坊主の言葉は、街の人々の悩みだけでなく、我々の悩みをも解決してくれそうだ。

お人好しで要領の悪い久下三久は、勤め先をリストラされ、路頭に迷っていたところを、猫まみれの貧乏禅寺・孤月寺の僧侶たちに救われる。クールでストイック、日々修行に勤しむ真面目な美坊主・空円。短髪ピアスにド派手な格好、夜のお勤めをして寺の生計を助けるホスト風僧侶・覚悟。2人の対照的な僧侶の元で、僧侶見習いとして居候することになった三久は、寺で修行を積む傍ら、街のいろんな事件に巻き込まれることとなる。

骨董屋の大切な現金が奪われた強盗事件。石材屋の一人娘の息子を誘拐しようするストーカー事件。孤月寺の檀家ではないのに、亡くなった妻の墓参りに来たと言い張る、豆腐屋の主人の不審な行動…。このシリーズで巻き起こる事件はどれも街に密着したものばかりだ。そして、事件の謎を空円が解いた時、その事件は、人々のすれ違いが元で起きたということ、その裏で、家族の確かな愛があったことに気づかされる。クールな姿も美しいが、空円の言葉には、胸が温かくなる心持ちがする。

「なかなかいい取り合わせだと思うぜ。一分の隙もない空円和尚に、全身隙だらけの三久だ」
「僕、生まれ変わったら、空円さんみたいになりたいです」

空円の凛とした佇まいは、三久にとって憧れだ。だが、空円は表情ひとつ変えずに厳しく三久を指導する。空円にとって三久はどういう存在なのだろう。心のうちでは何を考えているのだろう。黙々と日々の修行に励み、三久のことなど気にもとめていない風の空円が、三久によって次第に変わっていく。シリーズ最新作・第3巻『お坊さんとお茶を 秋の月の夜』では、美坊主たちの師匠・玄淵老師が登場。清らかな空円和尚を導く老師なら、尊いお坊さんに違いないと思っていたが…。三久は、自由奔放な老師に振り回されながら、尊敬する空円の過去を知ることとなる。登場人物たちの岐路を描くと同時に、空円の三久への思いも描かれるのだから、気にならないはずがない。

「……三久のせいで、心に波風が立つようです」

お坊さんたちからの尊く、ありがたいお言葉。仏語・禅語の程よいスパイス。胸を高鳴らせるような、お坊さんの美しい佇まい。もし、何かの悩みを抱えているならば、この本に救いを求めてみてはどうだろうか。美坊主の言葉、そして、彼ら自身の葛藤に、その活路が隠されているに違いない。

文=アサトーミナミ