ある日、突然「光アレルギー」に…。暗闇の中でしか生きられない生活とは? 闘病そして愛の物語

社会

2016/5/24


『まっくらやみで見えたもの 光アレルギーのわたしの奇妙な人生』(アンナ・リンジー:著、真田由美子:訳/河出書房新社)

 ある日、突然、闇の中でしか生きられなくなってしまったら……何も見えない、色すら感じない、そんな生活を受け入れられず絶望的になるだろう。

 自分の周りから光がなくなるなんて、まるでSFの世界のようだ。しかし、そんな絶望的状況に陥る可能性は誰にでもある。『まっくらやみで見えたもの 光アレルギーのわたしの奇妙な人生』(アンナ・リンジー:著、真田由美子:訳/河出書房新社)は、光アレルギーになり闇の中でしか生きられなくなった著者アンナさんの闘病記だ。

 国家公務員として働いていたアンナさんは、ある日、急に光アレルギーの症状に襲われた。光アレルギーとは光線過敏症とも呼ばれ、光に当たると皮膚が赤くなったり、ヒリヒリしたり、ひどい時にはじんましんや水ぶくれが起こったりするアレルギー症状である。特に症状のひどいアンナさんは日常のあらゆる光を遮断して生活しなければいけない。

 本書には「なんとも奇妙な、この前代未聞の事態は。早い話がパソコン画面の前にいると、顔の皮膚が焼けるようにひりひりするのだ。燃えるようにひりひりする。重症の日焼けのようにひりひりする。顔に火炎放射器を向けられているようにひりひりするのだ」という一節があり、アンナさん自身も突然の顔の変化に戸惑っていることがよくわかる。

 また、はじめはパソコンの光に反応し顔に症状が出るのみであったが、徐々に蛍光灯の光でも反応し、日光がダメになり、体中にも症状が出るようになって暗室へと閉じこもっていく。

 この暗室というのも、単なる暗い部屋ではダメで、アルミホイルを窓の大きさに合わせて切り、隙間ができないように1枚1枚テープで留め、それを重ね貼りし、ロールスクリーンを下ろし、カーテンをひく。ドアの隙間にはタオルを当て目張りもしなければならない。その他、服装も重要だ。夏場でも症状がひどい時には、帽子をかぶり、長袖のセーターにベルベットの上着を着て、絹のスカートの下に厚手のズボンを穿き、靴下とブーツを履かなくては生活できない。

 体調の良い時は夜に外出もできるが、それでも年間の多くが暗室の中で服を着こんで閉じこもる生活だ。もし、自分が彼女と同じような状況に襲われたら生きてはいけないのでは……と考えてしまう。

 しかし、アンナさんは強い。もちろん彼女だって絶望にくれる時もあるが、家でピアノのレッスンをしたり、オーディオブックを聞いたり、電話友達を作ったり、本を書いたりと暗闇の中で自分のできることを前向きに行っている。はじめは光アレルギーに興味を持って読みはじめたとしても、著者の人柄に魅力を感じる人も多いはずだ。

 また、この物語は闘病記であると同時に、同棲する彼との結婚へ向けての愛の物語でもある。支えてくれる人がいると、人間は強くなれる。結局、人を強くし、困難な状況を支えるのは愛と感じさせてくれる。単なる闘病記では終わらない一冊だ。

文=舟崎泉美