エンタメ

映画

『自殺島』森恒二「僕らの世代は、スター・ウォーズに“調教”されてるんです」【Episode 1】

 多感な頃にスター・ウォーズと出会い、その魅力に取り憑かれたというマンガ家の森恒二先生は、映画のみならずアニメ作品までチェックしているという筋金入りのファン。ダース・ベイダーとヨーダを敬愛し、学生時代からの盟友であるマンガ家の三浦建太郎先生とは、喧々諤々の議論を戦わせたという。『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』に至るまで、シリーズの持つ魅力について語っていただいた。

森恒二氏

もり・こうじ 1966年東京都生まれ。日本大学藝術学部美術学科卒。広告業界でイラストレーターとして活躍後、マンガ家となる。2000年『ヤングアニマル』で『ホーリーランド』の連載を開始、テレビドラマ化されるなど人気を集める。08年より同誌上で『自殺島』を連載中。10年からは『週刊ヤングジャンプ』に『デストロイ アンド レボリューション』も連載中。

 

スター・ウォーズで強制的にスイッチが入った

 僕は小学生のときに初めて『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』を見たんですけど、冒頭でスター・デストロイヤーが後頭部から刺さってくるみたいに出てきた瞬間に「おおっ!」となってから、ほぼ毎日スター・ウォーズのことしか考えられなくなりました。ずーっとダース・ベイダーの呼吸音「シューコー」をやるくらいの影響力でしたから(笑)。

 小学生の頃ってぼんやり過ごしてるじゃないですか、ザリガニ追っかけたりして。でもスター・ウォーズを見たことで「文化」に対するスイッチがバチッと入ったんです。それこそ強制的に。そしてアメリカって凄いな、と思った。それまでアメリカのことなんて考えたこともなかった小学生の僕の中では『デビルマン』や『宇宙戦艦ヤマト』『マジンガーZ』が一番だと思っていたのに、一気にガーンと目覚めさせられた感じだったんです。それが中学生になると「スター・ウォーズみたいな作品は日本じゃ無理だ。アメリカには勝てないかもしれない」というコンプレックスになってくるんですね。

 僕はオタク少年――当時はオタクという言葉はまだありませんでしたけど――だったので、中学生になってから雑誌とか小説といった活字の情報を貪り出したんです。そうすると「アメリカ凄い」と思っていた原因のスター・ウォーズが、実は日本の影響を受けているってことを知るわけです。ダース・ベイダーっていうのは日本の甲冑からデザインされていたり、ジェダイっていうネーミングは時代劇の訛りだとか……驚いたんですよ! アメリカの文化は凄まじくって、日本とかけ離れてると思っていたのに、調べてみると日本リスペクトで作られている。それを聞いてますます好きになってしまうみたいな! そう考えると「クールジャパン」って、その頃からあったってことでしょうね。

 僕は子どもの頃に剣道をやっていたんですが、小学生のときにスター・ウォーズのライトセイバーごっこで棒を持って構えたときに、あれっと思ったんです。西洋の殺陣って盾と重い剣を持ってガーンガーンとやるんですが、不細工だなぁって子どもの頃から気になってたんです。でもライトセイバーは剣道の「正眼の構え」(※1)だと気づいた。やがて中学生になってジョージ・ルーカス監督のインタビューなどを読むと、日本の影響があることがわかって「やっぱりそうだったのか!」と納得したわけです。オタクって、そういう情報から好きになっちゃうんですよねぇ。それにしてもルーカス監督は、自分がカッコいいと思った黒澤明監督の映画などを持ってきて作品を作るなんて……ずるい!(笑)

 なので僕にとってのスター・ウォーズは、映画や文化を楽しむきっかけであり、本を読み始めるとか情報を漁るというような、いろんなスイッチが入ってしまった作品なんです。

衝撃的だった『帝国の逆襲』のエンディング

 僕はシリーズの中で『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』が一番好きなんです。でも中学2年生のときにひとりで映画館に見に行ったときには、終わりで思わず声を上げてしまったんですよ。だってハン・ソロはカーボンで冷凍されちゃうし、ルークはケガしてやっとベッドから立てたくらいだし、「じゃあ俺たちはソロを救いに行ってくるぜ」って新参者のランド・カルリジアンがミレニアム・ファルコンで行っちゃう、そこに終わりの音楽が流れ始めて、「おいおい、待て待て!」と思っていたら……♪ズッチャラッチャラッチャチャチャチャって映画が終わっちゃって、「あああああ!」って声出ましたよ! テレビアニメみたいな「来週をお楽しみに」で終わるんですよ! そんなバカなって、あのときは本当に心が張り裂けそうでしたね。あの終わり方は酷ってもんでしょ、中学生に(笑)。

 まだ当時は映画の続編って、そんなにメジャーなことじゃないんですよ。だから「中学生になるまで待ってたのに、次は何年後だよ! 本当に作るんだろうな?」と。そこから情報漁りが始まって、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』まで3年間、ずっと追いかける羽目になるんです。スター・ウォーズのポスターを部屋に貼ったりして、悶々としてましたよ。

 とにかく『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』はダース・ベイダーがカッコいいんです! 悪役のカッコよさが凝縮されてて、ひたすらおっかないんです。そしてヨーダ! ダース・ベイダーとヨーダは、僕にとっての「スター・ウォーズの二大先生」です!(笑)そのヨーダが映画の中でルークにフォースの説明をするんですが、万物を結びつけている力を感じるだろう、ほらここにも、あそこにも、って言うんですよ。あれがもうすっごい心に染みてですね、世界って素晴らしい、ヨーダ教に入信します、と。これって非常に東洋的な考え方ですけど、海外の人たちは初めて触れた考え方だったんじゃないですかね。僕も八百万の神がいる、っていうのは聞いたことありましたけど、ヨーダのような素晴らしい言葉で説明してもらったことはなかったので、アプローチの仕方でこうして心にスッと入ってくるのかなって思いました。たぶん「スピリチュアル」というものに触れた最初でもあったんじゃないですかね。

 そして当然、中学生の森少年は小説版スター・ウォーズも読むわけですよ! そうするとフォースは「理力」と訳されている。昔も字幕はそう訳されていましたけど、「ことわりのちから」ってスゲェ、学校の勉強なんてどうでもいいわい、フォースとは何かを知らねばなるまい、となりますよ(笑)。このフォースは『AKIRA』(※2)みたいに何でも破壊出来る力とか、『超人ロック』(※3)みたいな光の剣で惑星も真っ二つにするみたいな圧倒的なものじゃなくて、ちょっと集中するとライトセイバーくらいは扱えるんじゃないかというリアル感、人間の力からちょっと逸脱している、というのが絶妙にちょうどいいんですよ。あとは銃弾をライトセイバーでピシッピシッと弾くじゃないですか。あれも普通の人間じゃできないけど、心の目を開くとできるっていう。よく設定を考えたな~と思いますよ。

 こうやって事細かなところまですべての要素に魅了される、というものってなかなか考えるのが難しいんですよね。僕らの世代はそんなスター・ウォーズで育って、それで悶々とさせられて、いろんなものを考えて作っちゃったな、と思いますね。

※1 正眼の構え…剣先を相手の目に向ける構え。「五行の構え」のひとつで、全ての構えに移行しやすく、攻撃も防御も可能で、かつ隙が少ないことから剣道の基本の構えとされる。「中段の構え」とも呼ばれる。他に「上段の構え」「下段の構え」「脇構え」「八相の構え」がある。

※2 AKIRA…大友克洋によるマンガ作品。1982~90年『週刊ヤングマガジン』に掲載。新型爆弾によって東京が壊滅、その後勃発した世界大戦後の荒廃した2019年のネオ東京を舞台に、超能力を持つ者と国家権力、それに抗う人々の戦いを描く。88年アニメ映画化。現在アメリカで実写映画化が進行中。

※3 超人ロック…聖悠紀によるマンガ作品。1960年代後半に同人誌で発表され、79年から『週刊少年キング』で連載開始。媒体を替えながら現在も連載が続く。銀河系を舞台に、永遠に生き続ける伝説のエスパーであるロックの活躍を描くSF作品。ラジオドラマ化、劇場アニメ化、OVA化されている。

 

『帝国の逆襲』で悶々としていた森先生は、高校へ入学して盟友となる三浦建太郎先生と出会います。続きはエピソード2で!

 

取材・構成・文=成田全(ナリタタモツ)

【関連記事はコチラ】
『ベルセルク』三浦建太郎が受けた『スター・ウォーズ』の衝撃!<1>
『ベルセルク』三浦建太郎「『スター・ウォーズ』は日本人のコンプレックスを毎回刺激してくるんですよ」<2>
『ベルセルク』三浦建太郎 「ジョージ・ルーカスが“物語を作る基本”を教えてくれた」<3>



この記事の画像

  • 640_240_0628
  • jisatsuto

TOPICS

最新記事

もっと読む

人気記事ランキング

ダ・ヴィンチ×トレインチャンネル

特集

ダ・ヴィンチニュースの最新情報をチェック!

ページの先頭へ