「子供ができないのはお前のせい」 嫁姑マンガの常識を打ち破る名作『かんかん橋をわたって』驚きの展開とは?

マンガ

更新日:2016/11/28


『かんかん橋をわたって』全10巻(草野 誼/ぶんか社)

 ファッションや音楽の流行がめまぐるしく移り変わる一方、変わることなく人々を魅了し続けるコンテンツがあります。その一つが、「嫁姑バトル」です。いびる姑と耐える嫁、遠巻きに眺めるだけの男たち…。バトルが過熱すればするほど、物語はドラマチックになっていきます。

 今回紹介するのは、そんな嫁姑バトルをテーマにした漫画でありながら、これまでの常識をすべて打ち破った 『かんかん橋をわたって』全10巻(草野 誼/ぶんか社)です。夫の実家で新婚生活をスタートさせた主人公の萌が、同居の義母・不二子から嫌がらせを受けるという、典型的な嫁姑バトルの物語です。

 不二子は、萌が作った柚餅子をカビだらけにしたり、泥棒の濡れ衣を着せたり、またあるときは、萌の携帯電話を隠して父親の死に目に会わせなかったりと、まぁ、とにかくひどい姑です。そんなある日、萌は自分が嫁入りしたこの地域に「嫁姑番付」という風習があることを知ります。姑のいびりが激しい家ほど、上位の番付になるという、トンデモ文化です。さらに、自分は番付4位。中々の上位ですが、同時に自分よりも苦しい思いをしている人がまだ上にいることに気付きます。萌は、番付上位の嫁たちに自ら会いに行き、そこで恐るべき嫁姑バトルの実態を目にするのです(ちなみに、ここの地域のお嫁さんは、みんな夫の実家で同居しています)。

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番付5位 権藤木さん
自室はなく、廊下の端っこで寝起きすることを強制される。子供たちは義母に取られ、夫も義母の言いなりに。

番付3位 美津井さん
義父の介護を一人でこなすも、それを義母に嫉妬される。嫉妬心がピークに達すると、洋服を鉄柱の上に隠すという謎の奇行に出るため、おかげで毎回警察沙汰になる。

番付2位 蕗江さん
不妊の原因が夫にあるにもかかわらず 、「子供ができないのはお前のせい」と姑に罵られ、ボロを着せられ、自由がまったくない生活を強いられる。

 ひどいですね~、えぐいです。ここまでくると、番付1位がどんな人か気になりますよね。しかし、それを明かすと壮大なネタバレになってしまうので、伏せます。

 そして、番付上位の嫁たちと交流を深めた萌は、姑の意地悪を撃退するために知恵を貸すのですが、その思考法はなんと不二子そっくりだったのです……。知らず知らずのうちに不二子に洗脳されていた萌。それを見てほくそ笑む不二子。ゾっとするような嫁姑バトルは、さらに激化していきます。最後に勝つのは萌か? 不二子か!?

 ところが、この物語はそんな小さな枠には収まりません。ここから怒涛のストーリー展開を見せるのです。後半になるにつれ、あなたはきっとこう思うでしょう。「あれ? この漫画って、“嫁姑バトル漫画”だったよね。“バトル漫画”ではないよね?」

 残念ですが、お話できるのはここまでです。ですが、誰にも予想できないクライマックスになっているのは間違いありません。本当に。嫁姑漫画の常識を打ち破った傑作、ぜひご一読を。

文=中村未来(清談社)