ネクストブレイク必至! 壮大なスケールと緻密な構成で“タイムリープ”を描く『サクラダリセット』シリーズ

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

『猫と幽霊と日曜日の革命 サクラダリセット1』(河野裕/角川文庫)

 『時をかける少女』『僕だけがいない街』『orange』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』、そして現在も快進撃を続けている『君の名は。』――本来ならば過去から未来へと一方通行であるはずの“時間の流れ”を変移する作品が近年注目を集め、ヒットとなる傾向が続いている。こうした時間移動をテーマにした物語は、一直線ではない歪んだ時間軸を行き来する緻密な構成によって先の読めないスリリングなサスペンスを生み出し、さらに「返ってこないはずの時間」を表現することによって、ノスタルジックな感興やかけがえのない時間を思う“切なさ”を強く胸に残す。そんな作品に多くの人が惹かれ、感動を覚えるのは、誰しも多かれ少なかれ「過去をやり直したい」という気持ちがあるからではないだろうか。

 河野裕の『サクラダリセット』シリーズは、まさにその「過去をやり直す」こと主軸に能力者たちのかけひきと青春、そして恋の葛藤を描く壮大な物語だ。舞台となるは特殊な能力を持つ人々が集う街・咲良田。見聞きしたすべてを決して忘れないという高校生・浅井ケイの“記憶保持”能力は、同じ高校に通う春埼美空の能力「リセット」と組み合わせることで真価を発揮する。春埼は「リセット」と言葉を発するだけで世界を3日巻き戻し、自分も含めてあらゆる人から、その3日分の記憶を失わせてしまうが、ケイだけが巻き戻った日から3日間に起きた“未来の記憶”を失うことがないからだ。2人が力を合わせることで、過去をやり直し、現在を変え、未来に影響を与えることができる。ケイと春埼は「リセット」によって世界から悲しみを消したいと願う。しかし、2年前に「リセット」の影響でひとりの少女が命を落としてしまった悲しみの記憶が、ケイの胸から消えることはない。ケイと春埼はさまざまな能力者たちと出会い、時に能力を駆使した複雑な頭脳戦を繰り広げ、時にその能力ゆえの切なる願いに触れ、成長を遂げていくと同時に2人の関係にも少しずつ変化が訪れる。複雑に張り巡らされた数々の伏線が回収され、“聖なる再構築(サグラダ・リセット)”の物語として収束していく展開はまさに圧巻だ。そして、何よりケイと春埼の10代ならではの純粋さと優しさ、正しさを求めようとする姿が切なくも温かな感動をもたらしてくれる。

 いわゆる“タイムリープ”ものの魅力と面白さのすべてが詰まっているといっても過言ではない『サクラダリセット』シリーズは、スニーカー文庫から全7冊が発売中。さらに修正を加えた新装版が、角川文庫から連続刊行中。新装版は現在、第3巻『機械仕掛けの選択』まで刊行されている(最新第4巻は12/25発売)。“時間移動”をテーマにした作品群が盛り上がりを見せている昨今、この『サクラダリセット』は実写映画化、テレビアニメ化も同時進行中でネクストブレイクに期待がかかる筆頭注目作品だ。大ベストセラーとなった「階段島」シリーズでも知られる著者・河野裕氏は本作について「私の小説の基本形、作家としてのベースを作った作品」と述べている。河野ファンはもちろん、冒頭に挙げた“時間移動”作品が好きなら人なら楽しめること間違いなし。ぜひご一読を。

文=橋富政彦