「あきらめも心の養生」「こだわりは身を滅ぼす」――動物が教えてくれる、人生の秘訣! 奇才漫画家と生物オタクによる新しいビジネス書

ビジネス

2017/1/18

 あらゆる生物の中で、人間が一番優れていると思ってはいないだろうか? 「すべてにおいて勝っている」と考えるのは、人の驕りだ。動物たちの生き方は、人間ほど高度で複雑ではないからこそ、生きる上でヒントになる大切な教えが、たくさん隠されている。

『LIFE 人間が知らない生き方』(麻生羽呂、篠原かをり/文響社)は、動物たちの知られざる生態から、人間が生き残るための「習慣」と「戦略」を学ぶことのできる新しい視点のビジネス書だ。

 構成はマンガと文章になっている。作画を担当しているのが『週刊少年サンデー』での連載経験を持つマンガ家、麻生羽呂氏。文章は生物学偏差値が105という生粋の生物オタク、篠原かをり氏。異色の二人がタッグを組んだ本書は、動物の生態を通して「生き方のヒント」を教えてくれている。

ナマケモノが教えてくれるのは、「あきらめも心の養生」。

 主に南・中央アメリカの熱帯林に棲むナマケモノ。睡眠時間は一日最長20時間。トップスピードは「時速160m」。一日に葉っぱを8グラム食べる。3週間に一度だけ樹の上から排泄のために地上に降りるが、その際に摂取した栄養の50%が森に還るという。

 面白いのが、天敵のワシに襲われた時の対応だ。「先にワシを見つけた場合、木にしがみついていた手を離して、地面に落ちる」(この際、骨折することも多くあるそうだ)。もしワシの方が先にナマケモノを見つけた場合、ナマケモノは早々にあきらめ、「せめて痛くされないように全員の力を抜く」(潔い……!)。長い爪で戦おうにも、動きすぎると体温が上がり死んでしまうのだとか。

 こういったナマケモノの生態は、人間から見ると不合理極まりないが、重要なことは、それでもナマケモノたちが種として生き残っているということ。

「あきらめないこと」はいつでも美徳のように語られる。だが、がんばりすぎて身体や心を壊してしまうぐらいなら、ナマケモノの生き方を知っておくことも、ムダとは言えないのではないだろうか?

「燃えるように生きることだけが人生ではないぞ」と、ナマケモノは教えてくれているのだ。

「こだわりは身を滅ぼす」――この教えを示してくれるのが、パンダ。

 日本でも大人気の彼らは、野生に1900頭ほどしかいない。絶滅の危機に瀕している理由の一つは、パンダが異性に対する厳しい選別をするからだという。一般的に動物界では強いオスがメスをゲットするが、パンダの場合、オスの容姿や性格が気に入られなければメスはなびかないのだそう。

 もう一つのこだわりはエサ。ご存じの通り、パンダの主食は笹。しかし、パンダはクマ科なので、消化器は肉食獣のものであり、200万年もの間、笹を食べ続けているが、消化器は未だに草食に対応していないとか。そのため、食べた笹のほとんどはそのまま排出され、1か月に一度、腸を一新するための「粘膜の塊」を排出するのだが、この時の痛みがすさまじいのだとか。

 そうまでしてでも、パンダは笹を主食にすることにこだわり続けているのだ。

「こだわる」ことで、人も成長することがある。世界を変えるような大成功は、「こだわり」から生まれることも多い。しかし、パンダのように「偏りすぎる」と、身を滅ぼすことになりかねない。「時に、笹のようなしなやかさが人生には必要」なのだと、愛らしくも頑固なパンダは教えてくれているのだ。

 当初、「動物の生き方を知ることで、人生が良くなったら苦労しないわ!」と、半ば期待せずに読んだのが、予想以上に面白く、心に刺さった。「それはこじつけだろ!!」と読む前に用意していたツッコミも不要なほど、「確かにな……」と思えることが多かったのもさることながら、動物のオモシロ生態を雑学として得られるのも嬉しい本書。

 あなたの人生を豊かにするヒントが、きっと詰まっているはずだ。

文=雨野裾