ラノベの挿絵は1冊30万円? 大変そうだけど羨ましい!! ラノベ絵師の日常と非日常

エンタメ

2017/1/18


『14歳とイラストレーター』(むらさき ゆきや:著、溝口ケージ:企画・原案、イラスト/KADOKAWA)

 締め切りというのはなぜか重なるもので、先週この仕事の依頼がきていれば……と思いつつ、でも仕事が貰えるのはやっぱり嬉しくて、時間を気にしつつも引き受けてしまう。これは、フリーで仕事をしている人の“あるある”だと思っている。しかしそうやって引き受けた仕事を家で1人黙々とこなしていると、たまに可愛い女の子か優しい男性が家のことを手伝いに来てくれないかな、なんておかしな妄想が頭をよぎる。そう、まさにこの『14歳とイラストレーター』(むらさき ゆきや:著、溝口ケージ:企画・原案、イラスト/KADOKAWA)のような感じで、運命的(?)な出会いをした子がうちに通ってくれたら、と思う。

 本作の主人公は、プロのイラストレーターとしてラノベの挿絵を描いて生計を立てている京橋悠斗。現在22歳で、一応大学生だ。とは言っても、仕事が忙しくなり、籍を置いているだけで全く通えていないのだが。そんな彼の日常に漫画のような展開が訪れたのは、夏コミが終わった翌日だった。悠斗が目を覚ますと、そこにはアニメ『魔法少女カニバスター』のヒロイン・赤城カニヤがいた。いや、実際には、赤城カニヤのコスプレをした14歳の少女・乃木乃ノ香がいた。

 乃ノ香は、夏コミで悠斗のブースの売り子をしてくれていた女の子だ。悠斗は打ち上げで酔いつぶれ、家が同じ方向だった乃ノ香が家まで送ってくれたのだが、そこで悠斗が食べたものをリバース。乃ノ香は服が汚れて帰れなくなってしまったため、仕方なく売り子で使った赤城カニヤの衣装を着て悠斗の家に泊まったというわけだった。

 この一件がきっかけで、乃ノ香は悠斗の家に家事をしに行くようになった。彼女は彼が描くイラストの大ファンで、少しでも仕事に専念してほしい、と手伝いを願い出たのだ。平日は学校終わりに、休日は昼頃から悠斗の家に来て家事全般をこなす彼女は、まるで通い妻だ。

 本作には、こんな爆発しろと言いたい羨ましい状況を手に入れた悠斗のほかにも、個性的な、だけどどこかリアルなキャラクターたちがたくさん登場する。また、イラストレーターという仕事の実情や、プロがコミケにサークル参加する内情、実際の暮らしぶりなど、イラストレーターを目指す人に有益な情報もたくさん盛り込まれている。

 例えば、ラノベの挿絵は1冊30万円(悠斗の場合)だとか、そこから税金や家賃、PC代などの経費を全て支払わなければならないとか、イラストレーターの仕事は“待ち”の多い仕事で、予定より遅れて依頼が来るのに締め切りは変わらないとか……。この本を読むだけでも、相当大変な仕事なのだということが分かる。でも、それでも本当に心底絵を描くことが好きで、だからやめられないのだということも伝わってくる。

『14歳とイラストレーター』で描かれているのはイラストレーターサイドの事情だが、作家側だって同じようなものだろう。生み出すことが好きで、多くの人に支えられながら、苦しみつつも楽しみながら仕事をして、そうやって出来上がっているオタク文化を愛している。コミケの“全員が参加者”文化も、「好き」で成り立っている世界だからこそ成立しているのだろう。この本を読むと、ラノベや漫画、同人誌やゲームなどがより愛おしくなってくる。だからオタクはやめられない。心からそう思う。

文=月乃雫