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メディア大注目の国際政治学者が、“超やり手”トランプ政権が向かうアメリカの将来像を語る!

 2016年11月、アメリカ大統領選挙で共和党のトランプ候補が当選した。メディアも識者もほとんどが予想だにしなかった驚きの結果であり、日本を含め世界中が困惑の色を隠せない。トランプ氏が大統領になるということはどういうことなのか。

 本書『「トランプ時代」の新世界秩序』(三浦瑠麗/潮出出版)の中で、アメリカは国際社会における「帝国」の座から意気揚々と撤退する、と国際政治学者の著者は指摘する。

 選挙中、アメリカ軍を日本に駐留させているコストを日本はきちんと払うべきだとトランプ氏は主張した。日本のみならず、韓国や欧州などアメリカ軍を駐留させている国々に対してもだ。これは単に金を払えということではない。これこそ、世界を影響下におく「帝国」の座から自ら撤退しようとしていることを意味している。

 アメリカはこれまで世界中の紛争に首をつっこんできた。なぜなら、「アメリカが国際的な制度作りを主導することが、アメリカ自身の長期的な国益につながっている」という命題が、第二次世界大戦後の国際社会の基盤となってきた発想だからだ。そこにはソ連との冷戦があり、常に対立しあう単純明快な構図があった。

 そして冷戦は終わるが、絶対的な平和が訪れることはなく、世界の安全保障は混迷へと向かう。冷戦後の90年代以降、アメリカは「人道的な目的」と称してコソボやソマリアなどに軍事介入を行うが、いずれも目的が達成されたとは言い難い結果に終わる。また、2001年の9.11を機に「対テロ戦争」としてイラクやアフガニスタンで戦争を行うが、なかなか成果を上げることはできず、次第にアメリカ国内の世論は厭戦気分となる。これを反映してオバマ政権が撤兵を進め、対テロ戦争は終わったもののテロは残るという状況が今だ。

 トランプ氏は、対テロ戦争の時代は終わったが、世界中でテロが頻発する時代に登場した。平和と安定をどう確保するのかという問いへの答えが「アメリカだけが担うのではなく各国も相応の負担をすべきだ」というものであり、アメリカ軍駐留のコストを払えということになる。

 著者は、ようやく冷戦後の「アメリカにとっての国益とは何か」が明らかになってきたと述べている。その国益とは「圧政に苦しむ他国の民衆を解放するという大義よりも、とにかくテロがアメリカに向かわないように。人的な被害を最小限に収めるためならば、アメリカではなくロシアが軍事介入してもらっても構わない」というものだ。トランプ氏とヒラリー氏の違いは、この価値観の変化を正面から認めるか否かであり、大統領選挙の議論を通して、アメリカ国民は自分たちにとって何が国益かはっきり理解したと思う、という。

 今後日本は同盟国だからといってアメリカを頼れるとは限らない。トランプ政権の外交にはこれまでの経緯は通用せず、ビジネスライクになるだろう。日本はどういう同盟国でありたいのか、同盟の在り方を見つめなおすべきときがやってきた。自由も平和もタダでは得られない。私たち日本人はぜひとも将来世代のために必要な議論を行い、判断していくべき、と本書は締めくくられている。

 数々の暴言やセレブぶりによって奇妙さばかりに焦点が行きがちであるが、トランプ氏はまぎれもないアメリカ大統領であり、しかも本書によればかなりのやり手である。また、トランプ氏一人による珍妙な政策なのではなく、アメリカの民意を反映した国策なのだ。トランプ時代の本質をとらえるものとして、本書をぜひ一読してみてほしい。

文=高橋輝実



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