離乳食の「手づかみ食べ」が良い理由 子どもの意欲を伸ばす子育てとは?

出産・子育て

公開日:2017/3/2

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    『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?(IDP新書)』(山口平八、清水フサ子:著、和泉功:編集/IDP出版)

 子どもの成長は食が支える。近年、子どもに「何を食べさせるか」「どれだけ食べさせるか」について敏感な親が増えている。しかしながら、「自分で食べるようにする」ことについては、それほど意識が向いていないのではないか、と『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?(IDP新書)』(山口平八、清水フサ子:著、和泉功:編集/IDP出版)は投げかけている。

 本書は、著者らが運営するどんぐり・どんぐりっこ保育園が大切にしている「手づかみ食べ」の実践のねらいや方法などがまとめられている。乳幼児が離乳食を手づかみで食べる。育児経験がある人ならよりイメージしやすいと思うが、周囲はベタベタに汚れる。

 なぜ、著者らは手づかみ食べを推奨するのか。

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 本書は、「食べる」ことは「生きる」うえでの根源的な行為としている。自分で食べ物を口に入れることは、その子の生きる意欲そのもの。親がその行為を「汚しちゃダメよ」と止め、あーんと開けた口にスプーンで食べ物を入れるのは、子どもが主体的に生きようとする意欲を削ぐことになる、と述べている。

 本書によると、「汚しちゃダメよ」は「あなたがすることはダメ」「お母さんがするほうがいいの」「大人が敷くレールにちゃんと乗りなさい」というメッセージとして伝わる可能性がある。そう考えると、たとえ周囲を盛大に汚そうとも、後片付けが大変であろうとも、子どもが自分で食べようとする姿を肯定的に見守ることができるのかもしれない。

 手の指は「突き出た大脳」といわれるくらい、脳の発達にとって重要な部分。人類は指を使って道具を駆使し、知能を発達させながら進化してきた。手づかみ食べという、食べ物を「見て」「触れて」「味わう」という複数の感覚を協調させる一連の行為が子どもの脳をより発達させ、物事の深みや本質を捉えられるようになっていくと本書は解説している。

 昔、小学生が使う鉛筆というと「HB」が普通だった。しかし、本書によると、今の子どもがよく使うのは「4B」や「2B」。筆圧が下がってしまっているからだ。どんぐり・どんぐりっこ保育園で手づかみ食べをした子どもが小学校で書く文字は、線が太くてしっかりとしており、クラスの保護者が驚くという。

 家庭でも実践できる食育は身近にありそうだ。

文=ルートつつみ