未来へのタイムトラベルは可能って本当? アニメや映画でおなじみの「空想設定」は実現できる?

マンガ

公開日:2017/3/16

『アリエナクナイ科学ノ教科書~空想設定を読み解く31講~』(くられ/ソシム)

 かつて僕らはどんな未来を思い描いていただろう。SFの世界にあったものが次々と実現している昨今。手元のスマートフォンひとつとってもきっと、数十年前の人たちは「何じゃこりゃ!?」と驚きの声を上げるようにも思える。

 空想の世界にあったものが科学の力で次々と実現する。何かと話題の人工知能やロボット、自動運転車もそれを感じさせてくれるが、さらにその先の未来を思い起こさせてくれる一冊が『アリエナクナイ科学ノ教科書~空想設定を読み解く31講~』(くられ/ソシム)だ。

 ベストセラー『図解アリエナイ理科の教科書』(三才ブックス)シリーズでも知られる著者が伝えるのは、マンガやアニメ、ゲームや映画に登場した“空想の産物”の現代科学的解釈の数々である。

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 例えば、タイムトラベルは人類の長年の夢だ。過去を変えられたら、未来をちょっとでも覗けたらとは誰もが一度は考えたことがあるだろうが、現在のところ、物理学的には「理論上では可能」とする定説があるという。

 一般的に、私たちの住む世界は縦横奥行きが存在する「3次元」だといわれる。しかし、タイムトラベルで必須なのが「4次元」という考え方だ。4次元とは「時間+3次元」の空間を意味する。これがいわゆるSF作品でよく見かける言葉「時空」であり、これを現実に照らし合わせると、時間という単位もブロックごとに切り分けて考えられるというのが本書の解説である。

 そして、さらに必要となるのが、アインシュタインによる相対性理論からくる「高速で移動する物体の時間軸は、低速で移動する物体と変化がある」という考え方だ。この変化とはすなわち“相対的に時間の進み方が遅くなる”ということであり、仮に地球の外周を自転以上の速さで進むことができれば、地上よりも進む時間が遅くなり、結果として“未来”へと行けるというのがあくまでも現在の“理論上”の仮説となる。

 ただ、果たしてこれを実現できるのだろうか。地球の自転は赤道地点で時速1700キロとされるが、本書によれば、時速数万キロの宇宙基地で過ごした宇宙飛行士のギネス記録でもその差はわずか0.02秒だったという。

 現在、人間を未来へ送り出すマシンに使えるレベルのエネルギーを生み出すのは難しいとする本書であるが、ただ、ひとつの可能性として「一部だけ未来と現在をつなぐ空間を作り、未来をのぞき見する」ためのタイムマシンは可能かもしれないという。

 これを実現するのが「レーザー光による時空のゆがみ」だ。光を収束させて発射するレーザー光は、じつは周囲の時空が若干ゆがむのだという。これを応用して現在の一部に四方をレーザー光に囲まれた空間を作り出せば、その隙間から“未来”をのぞき込めるというわけだ。

 ただ、ここまで“未来”についての話を繰り返してきたが、残念ながら過去に戻れるタイムマシンは、現在の科学技術をもってしてもほぼ「お手上げ状態」というちょっと残念な見解も本書では示されている。

 とはいえ、科学の進歩があっという間なのは事実で、その変化は現代の誰もが肌で感じていることだろう。本書ではこのほか「ネコミミ娘」の実現や、「レールガン」の今を追うなど、空想世界に近づきつつある現代科学の先端技術がちりばめられている。SF作品好きな人ならば、きっとワクワクできる必読書である。

文=カネコシュウヘイ