セブンイレブンや「MONO」消しゴムの“あの色”が商標登録!「色彩のみからなる商標」とは?

ビジネス

公開日:2017/3/29


 先日、セブンイレブンの店頭看板の色彩(白地に橙、緑、赤の横棒)とトンボ鉛筆の消しゴム「MONO」の消しゴム入れの色彩(青、白、黒)の商標登録が認められました。「色彩のみからなる商標」が登録されたのは初めてのことであり、画期的なことといえるでしょう。“初めて”だとか、“画期的”だとかいわれても、そもそも商標について、よく知らないとピンとこないかもしれません。ベリーベスト国際特許事務所の弁理士が「商標」について説明します。

■そもそも商標って何? 著作権とは違うの?

「商標」とは、商品やサービスの提供者が誰かということを認識できるようにするための文字やロゴ等の図形のことです。

 商品やサービスを指定して商標を出願し、審査を経て登録されると「商標権」が発生します。そして、類似する商品やサービスについて類似する商標を使用して商標権を侵害する者に対して、侵害行為の差し止めや損害賠償を請求することができるようになります。たまたま似てしまったのか参考にしたのかを問わず、商標権は保護されます。また、商標権の存続期間は登録日から10年間ですが、何度でも更新することができます。なお、商標権の効果は国内にしか及びません。外国で商標権を主張するためには、その国の商標制度にのっとり、その国で権利を取得しなければなりません。

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それでは商標権と著作権の違いについてご説明します。

 著作権は、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属する創作物を保護する権利です。著作権は、登録されないと権利が生じない商標権と異なり、著作物の完成と同時に著作権が発生します。また、たまたま似てしまった著作物については、著作権侵害にはならず、その著作物にも別個の著作権が発生します。さらに、日本国内だけでなくベルヌ条約等の著作権関係条約に加盟している国においても著作権を主張することができます。ベルヌ条約は2016年4月末現在171カ国が加盟しているため、ほぼ全世界で著作権の主張が可能という状況です。著作権の存続期間は、概ね著作者の死後50年間で、更新することはできません。

 なお、商標登録されても著作権や著作隣接権に抵触する場合は商標の使用が制限されます。例えば、他人の著作物を模倣して制作したロゴが商標登録された場合は、商標権者には著作権は発生せず、著作権者に無断でその登録商標を使用することはできません。

■商標には色彩の他にどんな種類があるの?

商標のタイプは下表の通り。2年前に拡充されました。


 新しいタイプの商標のうち、「色彩のみからなる商標」以外の4つについては、続々と登録が認められてきましたが、色彩については、2年近く経っても、登録が認められるものがまったく現れませんでした。このほどようやく、セブンイレブンの店頭看板とトンボ鉛筆の消しゴムが「色彩のみからなる商標」として、はじめて登録が認められました。

■なぜ「色彩のみからなる商標」の登録はなかなか認められなかった?

 「色彩のみからなる商標」の登録が、なかなか認められなかったのには理由があります。
そもそも、上表の通り、文字・図形等と色彩との結合による商標は、2年前の拡充以前から認められており、実際に、たくさん登録されています。「文字・図形等と色彩との結合による商標」には、赤地に白文字で「ユニクロ」と記載されたものが例に挙げられます。それでは、なぜ「色彩のみからなる商標」は登録が難しいのでしょうか。

 「色彩のみからなる商標」に限らず、商標として登録が認められるためには、他の商品・サービスと識別できなければなりません。それが、図形や文字との組み合わせではなく、色彩だけで特定の者の商品・サービスであると識別できるようになる場合は、それほど多くはないと考えられます。色彩は、本来誰でも自由に選択して使用することが許されるものであり、特定の者の商品・サービスであると識別できるようになったと思われる色彩を商品・サービス表示として保護することが、色彩使用の自由を制限することに繋がらないかという点も含めて慎重に検討されなければならないからです。

 そのため、「色彩のみからなる商標」として認められるには、

・色彩が従来の商品・サービスに見られなかった新規又は特異なものである
・その色彩が特定の商品・サービスに継続して使用されている
・その色彩が施されている商品・サービスの宣伝広告が全国的に繰り返されている

 結果として、その色彩を施された商品・サービスを見ただけで特定の者の商品・サービスであると連想できるほど、世間の人々に浸透している必要があるのです。今回認められたMONOは48年間、セブンイレブンは30年以上にわたって同じ色彩を使用し続けており、世間的にもそれぞれの色彩が認識されていることが登録につながりました。

 このように、簡単そうで実はシビアな条件を満たす必要がある「色彩のみからなる商標」が初めて登録されるまでに2年近くを要しました。今後も爆発的に増えることはないでしょう。また施行日(2015年4月1日)以前から使用している色彩については、その色彩が商標登録されても、使用することができます。

 実は、セブンイレブンは既に海外では「色彩のみからなる商標」の登録を済ませています。今回、本国である日本で遅ればせながらようやく登録できたのです。アメリカやEU、オーストラリアや韓国といった諸外国では、日本で施行される以前から先述の「新しいタイプの商標」の登録が認められています。我が国企業も諸外国において出願や権利取得を進めるケースが増加しています。

 法整備は、国際的な経済活動の基盤となります。今回の拡充は、企業の経済活動のグローバル化を支援する制度整備の一環として、“海外では保護されているが日本では保護されていない商標”を保護対象に加えることにより、マドリッド協定議定書に基づいた国際登録出願を可能とする側面もあります。マドリッド協定議定書の加盟国は2017年3月現在98ヶ国あり、加盟国の中から保護を求める国を複数指定することができるため、我が国企業の権利取得を後押しします。

監修:リーガルモール by 弁護士法人ベリーベスト法律事務所

文=citrus 弁理士 山岸 敏郎