凄腕の始末屋から父の顔へ「エンジェル・ハート 2ndシーズン」”家族愛”名シーン・ベスト3

マンガ

更新日:2017/4/24

 北条司氏の代表作である『シティーハンター』の世界観をベースに、壮大なパラレルワールドとして描かれたストーリー。それが、『エンジェル・ハート』だ。

 闇のスィーパーでシティハンターと呼ばれた、冴羽獠。ある日、最愛のパートナーだった槇村香が突如、交通事故に遭い死亡。彼女の心臓が移植されたのは、なんとマフィアに殺人マシンとして養成された香瑩(シャンイン)。獠と出会ってからの香瑩は徐々に人の心を取り戻し、やがて二人は父と子になっていく――。

 『エンジェル・ハート 2ndシーズン(ゼノンコミックス)』(北条司/徳間書店)では、凄腕の始末屋として描かれる獠の姿もあるが、獠と香瑩、そして香瑩とともに生き続ける香という3人の親子愛も垣間見ることができる。その中で、特に獠が父親の表情になる名シーン、ベスト3を紹介しよう。

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第3位:第11話「想い出の写真館」(3巻)

 5年前、あの交通事故がなければ、2人で撮るはずだったウェディングドレス姿の記念写真。それをあの時と同じ写真館で、しかも獠と香瑩、そして香に変装した殺人者・カメレオンの3人で撮影するストーリー。

 香瑩の父である獠が、今回は香とともにタキシード姿で写る家族写真。幼い頃から香を知る写真館のご主人のおかげで、とびっきりの香瑩、いや香の笑顔を見ることができる。奇跡の3ショットは、ファンならずとも必見だ。

第2位:第61話「獠の手料理」(13巻)

 香が初めて獠に作った料理を、今度は獠が香瑩のために作るストーリー。

 香の得意料理だった「塩辛とジャガイモのパスタ」を食べる獠。香が「おいしい?」と聞くと、「まずい!」と獠は即答。次の瞬間、香は思わず自分のパスタを皿ごと獠にぶちまける。

 同じ料理を獠が香瑩のために作ると、香瑩もなぜか勝手に体が動き出し、気がつけば香瑩も獠にパスタをぶちまける――という場面。

 香から獠、そして獠から香瑩へ。思い出のパスタが家庭の味として受け継がれていくシーンに、香の料理を通じて父と娘が本当の家族になっていく様子がわかる。

第1位:第74話「人生の彩り」(15巻)

 ストーリーが始まった当初は15歳だった香瑩も、ついに二十歳! 実父である李大人しか知らない香瑩の本当の誕生日をめぐり、二人の父親の愛が交錯する。そして香瑩も、殺人マシンとして死と共に生きてきた過去から、ようやく生と向き合い、ゆっくりと大人になっていくストーリーだ。

 李大人とは、これで永遠の別れになるかもしれない――2人の父をもつ香瑩が、これまで誰にも言えなかった想いをこらえきれず、獠の胸で号泣するシーン。コードネーム「グラスハート」(ガラスの心臓)と呼ばれた香瑩が、自らの感情を隠すことなく父である獠に表現できるようになった瞬間だ。

『シティーハンター』の冴羽獠しか知らない人も、十分楽しめるストーリー。血のつながりを超えた「父と娘、家族の物語」として読むのも、おすすめだ。

文=富田チヤコ