「どうせ無理」に負けない子ども達を増やしたい! TEDの魂のスピーチがYou Tubeで250万再生超! 町工場でロケット開発に挑む、植松さんの“心に沁みる言葉”とは?

文芸・カルチャー

2017/5/5

2014年に北海道・札幌で開催された「TEDx」のスピーチは、世界中の人たちの心を打った

20人の会社でロケットを打ち上げる

通常、宇宙ロケットはどこが打ち上げるのか? 一番有名なのはNASA(アメリカ航空宇宙局)だろう。日本の組織ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)が思い浮かぶ。ロシアでは…よくわからないけれど大きな組織だろう。宇宙にロケットを打ち上げるのだから大きな組織の力が必要なのは明らかだ。ニュースでよく目にするのも大きな発射台に乗った大きなロケットだ。

ところが、北海道・植松電機代表取締役の植松努さんは、社員わずか20人の会社を率いてロケットを打ち上げたり、人工衛星の開発をおこなったりしている。植松さんは著作『「どうせ無理」と思っている君へ 本当の自信の増やしかた』(PHP研究所)の中でこう言っている。

「宇宙の仕事はとんでもなくお金がかかる」と思っている人が多いけれど、僕らの宇宙開発は、たった20人の工場で稼いだお金だけでできています。なぜならば、今は材料が安いから。

昔なら高価な材料でも今は安く買える、どんどん挑戦できる環境にあるのに、日本のロケットがそうならないのは「失敗したくないから」という意識が働いているからだという。同書では「失敗したくないから」と言って挑戦しないのはもったいない! と失敗を恐れない「自信」を取り戻すさまざまな方法が紹介されている。

この本は自信をなくしている子供達に向けて書かれているのだが、大人でも十分参考になるし、読んでいて面白いし、むしろ大人こそこれを読むべきではないかと思う。

誰が自信と可能性を奪うのか

千葉・柏の葉T-SITEでのイベントの模様
 その著作の刊行を記念して4月23日(日)に植松さんのトークイベントが開催された。会場は千葉・柏の葉T-SITE、東京・代官山 蔦屋書店の2箇所。千葉の会場では実際にモデルロケットの打ち上げも実施され、東京の会場では植松さんのこれまでの体験が語られた。

ロケットの開発だけでなく、本を書くようになったことや、講演会を頻繁におこなうこと、それらのきっかけは、植松さんがボランティア活動をしているときに出会った子供達。彼らは児童虐待を受けていたという。なぜ子供達は虐待されるのか? 誰が子供達を虐待しているのか?

植松さんは考えた結果、どうやら自信と可能性を奪われ「どうせ無理」と思ってしまった人が、自分より弱い人の自信と可能性を奪おうとした結果、最終的に弱くて優しい子供達が犠牲になっているのではないかという結論に辿り着いた。それならば「どうせ無理」に負けない子供を増やしていきたいと思うようになったという。

代官山 蔦屋書店で開催されたトークイベントの模様。会場は多くの人で賑わい、参加者からの様々な質問が飛び交った

植松さんの娘さんが通っていた小学校のクラスはいじめが蔓延して学級崩壊のようになっていた。その状況を打破するためにロケットを作る授業をやったところ(当時植松さんはPTA会長)、ロケットを飛ばすまでは「どうせ自分のロケットは失敗する」とクラスのほぼ全員がそう思っていたのに対し、ロケットの打ち上げは成功。その結果、植松さんはクラスの男子の信頼を得ることになる。そしてその男子児童達がいじめを止める役割を果たすようになった。

その評判は徐々に広がっていき、札幌の中学校から講演の依頼がきたり、道外の修学旅行生が植松さんの会社を訪れるようになったという。その頃の会社は小さく狭かったので修学旅行生を受け入れるのに相当な苦労があった。そこでなんと植松さんは、会社を訪問してくれる子供達のためにビルを建てた。その結果どんどん訪れる学校は増えていき、現在は年間で約100校、述べ1万数千人が訪れているという。

人の意見は聞かなくていい!?

最近は優しい人が多い。それはそれでいいことだけれど優しい人は何かを諦めていることが多い。諦めることで状態をよくしようとしている。でもそれでは状態はよくならない。優しい人は自分の居場所を譲っていくばかりになる。そして気がついたらこの世に生きる場所がなくなる。それはとても恐ろしいこと――。

だから好きなことは諦めないで場所を他に移せばいいという。場所を移せば居場所はあるし、好きなことを話し続けていたら、協力してくれる人と繋がっていくことができる。

そして、好きな事を話していると、なにかと文句や意見を言って来る人がいるが、その人は自分以下の存在を作りたいだけで、議論しても無駄なので無視することが大切。SNSならばブロックをしてしまえばいい。

どんどん話したいけれど、言葉がなかなかでないときは本を読んで単語を増やして頭を整理するのがおすすめだという。植松さんのロケットが大きな事故を起こしていないのは先人達がロケットの記録を残しているからで、本から知識を得ないと僕たちは石器すら作れないということは忘れないでほしいと語った。

東京のイベントでの質疑応答の際に「不安を感じながらロケットの発射ボタンを押して、高く打ち上がった反動で、その不安が消えていくイメージが沸いた」と語った方がいた。そのイメージには植松さんも「そうそう」とうなずいていたのだが、植松さんはまさにそうやって自信を持ち続けていたからこそ、子供の頃からの夢だった宇宙ロケットを作るという夢を叶えることができた。

植松さんは言う。

「考えてみてください。誰も他人の夢を否定しなくなったら、誰もが安心して夢をしゃべられると思いませんか? すると、みんなもっと仲良くなると思います。そして、誰もが、他人の夢を“だったらこうしてみたら?”と応援して支えたら、みんなの夢が叶います。きっと、あっというまに素晴らしい社会がやってきます」