もはや読む飯テロ! 元マイクロソフト社長のグルメ本がめっちゃ「うまい!」

ライフスタイル

2017/5/10

『コスパ飯』(成毛眞/新潮社)

 食事へのこだわりは千差万別だ。ひとくちに美味しいものといっても、趣味嗜好は十人十色。誰もが絶対に「うまい!」と舌をうならせるようなモノは、おそらくどこにも見当たらない。だからこそ、他人が何をどう味わっているのかも気になってしまうものである。

 時には、グルメ本もその足がかりとなる。書店には数多くの本が並んでいるのだが、その中でも、元・日本マイクロソフト代表取締役社長である成毛眞さんの著書『コスパ飯』(新潮社)は、さながら“読む飯テロ”といってもさしつかえないほどの一冊。成毛さんのこだわり溢れる内容を読み進めると、気が付けば腹を空かせてしまうほどだ。

◎コスパ飯とは投資効率がよいか。かしこまった店は苦手という著者

 本書を目にすると、やはりまず引っかかるのはタイトルそのもの。シンプルに「うまい!」を求める成毛さんは、自分にとって「どれだけ投資効率がよいか」をモットーに食べ歩きを続けてきた。最大の目的は「どこかで出合ったうまい料理を、家でよりうまくつくること」であり、そのために、料理のジャンルも何もかもへだてなく「うまいもの」を追い続けてきたという。

 現在は書評サイト「HONZ」の代表を務めるなど、成毛さんの経歴を振り返ると“さぞ高くて美味しいものに囲まれてきたのだろう”というイメージもつきまとう。しかし、のっけから「高くてまずいものと同じくらい、かしこまった店が嫌いである」と断言するあたり、成毛さんが自分なりに食の“本質”といかに向き合っているのかが分かる。

 成毛さんいわく、かしこまった店というのは「シーンとしていて、店主や職人がこちらをじっと観察していて、無言のうちに強いプレッシャーをかけてくるような店」。のれんをくぐり“いらっしゃい”と言われた瞬間、店主が「その店の客としてふさわしいかどうか」をみきわめるようなお店は、そこでしか味わえないものがあっても「知らないまま死んでいっても悔いはない」とまで言い切っている。

◎ルールを定めて、とにかく「マイ・ベスト」を求めるため食べ比べる!

 お店選びにもこだわりをみせる一方、では、肝心の味についての探究心はどうなのか。成毛さんは過去に、自分なりの「マイ・ベスト」を追い求めるべく様々な食べ比べに挑戦している。

 例えば、牛めしの食べ比べはその一つだ。厳密にいえば、丼モノのひとつである「吉野家の牛丼はうまい」と太鼓判を押すが、一方で、牛めしに目がない成毛さんはある日、牛めし弁当を食べているときに「もっとうまい牛めしもあるのではないか。それも、案外身近に」と疑問がわいてきたという。

 しかし、日本全国津々浦々を食べ尽くすのは難しいことから、成毛さんは自分なりに「JR東京駅と銀座三越の地下」に絞り様々な牛めし弁当をひたすら食べまくった。仕事の合間をぬい、チャンスを作り食べ続けること4年間。本書にはその証しとして、合計39件の牛めし弁当の表が記録されている。

 また、牛めしなどの料理に限らず、調味料や飲み物に至るまで「マイ・ベスト」を追い求めてきた成毛さんであるが、ワインの飲み比べをした際には「価格を3000円台で固定する」などのルールを作り、とにかく「うまい!」とうなれるようなモノを探し続けてきたという。

◎“舌と目”で味わえる日本食の特異さと侮れないコンビニ食品

 国もジャンルも問わず、あらゆる「うまい!」を求めてきた成毛さんが、強く主張するのは日本食が「実に特異な料理であること」だという。

 調理方法などにみる繊細さは、よく聞く魅力の一つでもある。しかし、より深く掘り下げる成毛さんは「食べないものが皿に乗っていること」もその特徴だと述べる。いわれてみれば、和食の盛り付けには季節ごとの風情も垣間見える。春には桜、秋には紅葉といったように舌だけではなく「目でも楽しんで欲しい」という工夫が施されているのだ。

 さらに、スーパーやコンビニで見かけるレトルト食品も成毛さんは「侮ってはいけない」と説く。フリーズドライ製法など、食品加工技術の先進性もよくいわれる日本であるが、昨今は、売り場に並ぶ商品も多種多様。著者がその一例として取り上げるのは、コンビニで販売されている冷凍のつけ麺。「そんじょそこらの店のものよりうまい」と感触を示すにあたり、「穂先メンマやほぐしサラダチキンなどをトッピングするのも良い」と自分なりのアレンジも紹介している。

 食事をどう楽しむかは、人により多種多様である。でも、だからこそ人のこだわりをのぞき見られるのはおもしろい。最後に、本書を手に取るならぜひとも腹をめいっぱい空かせてから読んでほしい。誰もがきっと、成毛さんと肩を並べて料理を味わいたくなる一冊である。

文=カネコシュウヘイ