我が子を残虐に殺した鬼畜は、実の親――。その手に掛けながらも、「愛していた」と言う矛盾

社会

更新日:2017/6/5

 動画投稿サイト「本TUBE」のスペシャル企画“著者出演インタビュー”で、ノンフィクション作家・石井光太が2016年8月18日(木)に発売された『鬼畜の家~わが子を殺す親たち~』について語っている。

 国内外を舞台に、貧困、医療、戦争、災害など数々の時事問題やセンセーショナルな事件を取り上げた作品を執筆してきた石井。『レンタルチャイルド-神に弄ばれる貧しき子供たち』『遺体-震災、津波の果てに』をはじめ、逆境の中で生きる人々の美しさにスポットを当てた、多くの著書を世に送り出してきた。

よく貧困地域だとか、戦争をしている地域だとか、事件の場所だとか、辛いところを取材しているねと言われるんですけども、僕は取材によって辛い現実を見たいというのではなくて、その辛い現実の中で人間が、必死に生きる美しさというものを見つめてみたいという気持ちがあるんです。

 耳を塞ぎたくなるような残虐な児童虐待事件を克明に綴った『鬼畜の家~わが子を殺す親たち~』。石井は2年間をかけて徹底的な取材を行っているが、決して虐待する親の悲惨さを描きたいのではないと語っている。

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実際に虐待をしている親に会ってみると、みんな口を揃えて“愛している”と言うんですね。私の子供を愛していた、だけど殺してしまったんですと、涙ながらに言うんです。

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 報道とは異なる役割で、著者の作品はひたすら真実を深く抉る。虐待する親たちを三代にわたって遡る調査では、その生育の歴史までを追っていく。

僕は、“愛していた”と“殺してしまった”というものが全く違うものだと思っていたんですが、実際に彼らの生い立ちなどを辿ると、親に愛された事が無かった、親に捨てられてきた、親に私生活を掻き乱されてきた。そういった人というのは、子供を愛しているんだけども、子供の“愛し方”が分からない。それが結局、虐待、もしくは子供を殺めるという事につながってしまう。でも彼は必死になって子供を愛そうとしてるんですね。僕は、やはりその姿を描きたいと思ったんです。

 著者が焦点を当てるのは、いま過酷な世界の中で生きる人々の、何とかして生き延びよう、何とかして生きていこう、何とかして人を助けよう、という気持ち。闇の中の光を描くことこそが、著者のテーマだという。

 偏った世論に流されて、本質を見失っていないだろうか? 少し立ち止まり、著者が魂を削りながら綴り続けている“世界の本質”を覗いてみてほしい。

◆「本TUBE」石井光太インタビュー
http://www.hon-tube.com/pc/movie.php?movieid=1822

※掲載内容は変更になる場合があります。