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30歳独身・埼玉県実家暮らし、まんしゅうきつこ『ハルモヤさん』完結! ハルモヤさんを見守る先輩・臼井さんに注目!

『ハルモヤさん』(まんしゅうきつこ/新潮社)

 アラサー、独身、実家暮らし、処女……ある意味、鬼気迫る設定を背負った主人公・春靄きの子(以下、ハルモヤさん)を描いた『ハルモヤさん』(新潮社)の第2巻が発売された。

 埼玉県熊谷市で生まれ育ち、熊谷を一度も離れることなく実家で両親とともに暮らすハルモヤさん(30歳)。第1巻では、雨の日には父親に車で送迎してもらい、休日には昼の2時まで眠りつづけ「起きてるとつらいんだよ」と、両親に言い放つハルモヤさん。それでも「まだ何とかなると思っている」彼女の日常を、つかず離れず淡々と描いた。しかし、完結編となる第2巻では“こっち側の人間”だと思っていた、親友のサキさんに彼氏ができたことがきっかけとなり、焦りを感じたハルモヤさんは「おかっぱマニア」なる出会い系サイトに登録してしまう。

 出会い系サイトに登録し、ある男性と会うことになったハルモヤさんの運命については、単行本を読んでいただくとして、今回注目したいのはハルモヤさんが務める図書館の先輩・臼井さん(独身アラフォー)だ。世間を斜めに見がちなハルモヤさんと、絶妙な距離で接する臼井さんは独特な存在感を醸し出しているキャラクターだ。

 たとえば、初恋相手の大橋くんの10円ハゲを望遠鏡でこっそり見てしまったことを、本人に告げ、見事に大クラッシュしたハルモヤさんに、臼井さんがかけた言葉がこちら。

「初恋なんて今くらいでおわらせるのがちょうどいいのよ」
「そういうもんですか」
「そうよ イタイおばさんになっちゃうわよ」

 30歳で散る初恋、それがちょうどいいかどうかは不明だが、彼女は“イタイおばさんになる”が、落ち込んでいるハルモヤさんを立ち直らせるキーワードだということを知っているのだ。いってしまえば、ハルモヤさんをうまくコントロールできる、稀有な存在なのかもしれない。

 そんな臼井さんは現在、“つい”拾ってしきてしまった捨て猫18匹と共同生活を送っている。いつも落ち着いた印象のある臼井さんだが、猫の話になると3時間ぶっ通しで話し続けるなどの意外な一面も。猫とともに生きる彼女を目の当たりにして「あれ絶対結婚できないだろ でも何であんなに幸せそうなの!? 教えて!! 誰か教えて~」と、驚愕したハルモヤさん。

 そして最終話、諸事情により心折れたハルモヤさんに、臼井さんがかけたひと言を読めば、臼井さんのような先輩がいるハルモヤさんがうらやましい、そう思ってしまう読者もいるはず。

 いつになっても大人になりきれないハルモヤさんを見守り、心地いい関係を築く臼井さん、やはりタダ者ではない。

 劇的なことも起きず、ただ、なんとなく続く日々がいいことなのか悪いことなのかわからないし、答えも出ない……、それでもいっか。と思えるラストは必見だ。

 そして、第2巻にはまんしゅうきつこ先生が生まれ育ち、ハルモヤさんの舞台となった熊谷市を、先生の記憶とともに旅するエッセイ漫画『熊谷ぐるり旅』と作者初のホラー漫画『ゆうちゃんと早乙女さん』を同時収録。まんしゅうきつこ節が炸裂したこちらの二作も、読む者に深い爪痕を残すことだろう……。

 自分探し真っ最中のアラサー、ハルモヤさんと、自分探しの旅をしてみては?

文=真島加代(清談社)



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