理想的なランニングフォームは◯◯◯を意識せよ! 運動オンチだったマンガ家が52歳で「フルマラソン3時間以内」を達成できたワケ

健康・美容

2017/6/2

『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』(みやすのんき/実業之日本社)

 今までのマラソンの指導書は陸上競技の経験がある元選手や監督が書いたものが多かった。しかし今回紹介する書籍の著者はマンガ家。しかも駆けっこは毎年ビリだったという運動オンチの、みやすのんき氏。しかし、一念発起して52歳にして全マラソン競技者人口の3%未満といわれるサブスリー(フルマラソンで3時間を切るタイムで走ること)を達成した。

 その経緯とサブスリー達成に至る緻密な考察、濃密なトレーニング方法をまとめた『走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー』を2015年12月に出版。マンガは、身体の動きを絵に描く。描くためには動きを理解しなければならない。人体を深く追究したマンガ家ならではの偏執ささえうかがわせるランニングフォーム分析は大きな話題となった。まずはこの図をみてほしい。

『走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー』より

 A図はよく雑誌の広告やマンガでも見かける典型的なランニングポーズ。しかし、みやす氏は見た目パッとしないB図の方が正解で、A図を意識すればするほど遅くなるという。膝や足首を使って後ろに蹴り出す動作は余計で、意識するべきは、とにかく着地した足をすぐに前に向かわせることだという。それはトップランナーの筋出力データをみると一目瞭然だ。

 同書はサブスリーを目指すレベルの練習にページを割かれていたが、初心者やサブ4などの中級者向けの内容にしてほしいという要望に応えたのが2017年1月に発売された、第2弾『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』である。

「大転子」とは、骨盤の股関節につながる大腿骨外側の出っ張りの部分。多くの人が足の付け根は骨盤の下にあると思っているが、実際は股関節は骨盤の横にある。しかし、みやす氏は、股関節自体は奥まっているので意識しづらいため、容易に手で触れることができる「大転子」を意識してランニングに取り組むことを推奨している。

『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』より

「大転子は人間が歩く、走ることにおいての骨盤のランドマークです。そこを意識して走ることによってランニングが効率よくなります。今までの体幹をねじるような指導、曖昧な骨盤意識と区別するために『大転子ランニング』と名づけました」(みやす氏)

 これは全然特殊な走法ではなく、人体に自然でまっとうなランニングフォームだ。膝を高く上げようとせず、ストライドを無理にひろげず、膝から下は蹴らず、力も入れずただ置きに行く。これらは東アフリカのトップランナーなら誰でも自然にやっていることだ。ランニングフォームがよくなれば故障をしなくなる。ランニングフォームの改善はマラソンで速くなるごく当たり前の近道なのだ。

 みやす氏は「大転子」を意識したフォームづくりの手法の一つとして「スローシザース」と名づけた練習法を提案する。初心者は上手く地面の反発力を利用できず、その結果、筋肉でもがくように走ってしまい、息が上がり、すぐに疲れてしまう。走るときに足はひろげるのではなく閉じることを意識するのだ。それによって地面の反発力を受け取れるようになり楽に軽く走れるようになる。まずはゆっくりした疲れない速さで「大転子」を意識しながら、楽に長く走る動きを作っていく。

『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』より

 初心者や記録が伸び悩んでいるランナーはまさに目からうろこが落ちる練習法だろう。自ら50歳を過ぎて短期間でサブスリーを達成しただけに説得力もある。そのみやす氏は2016年にも再度サブスリーを達成、そして自己ベストを更新しているのだが、その挑戦記も面白い。とにかく熱いのだ。執筆による練習中断、そして加齢に抗い練習を続ける涙ぐましい努力。みやす氏のマラソンに対する真摯な気持ち、ランナーなら誰もが共感してしまうに違いない。

文=古瀬大樹