健康・美容

がん治療中の女性のために―細やかな心配りの感じられる、優しい“美容本”

『がん治療中の女性のためのLIFE&Beauty』(さとう桜子/主婦の友社)

 細やかな心配りの感じられる、なんとも優しい“美容本”だ。
 白地に水色の罫線が入っただけのシンプルなカバーに、『LIFE&Beauty』の文字が大きく浮かぶ。中を開くと、美しくありたい女性に向け、クレンジングや化粧水のつけ方、眉やアイメイクの方法、ボディケアのやり方など、美容の基礎知識がわかりやすくまとめられ、優しいタッチのイラストも添えられている。

 だが、ただの美容本ではない。一見気づきにくいが、これはがん治療中の女性に向けた美容本なのだ。そして、この“気づきにくさ”は、心配りのひとつである。

 著者は2011年、子宮体がんと診断され、抗がん剤治療を続けるうちに肌にダメージを受けた経験を持つ、さとう桜子さん。それまで30年以上、美容業界で働いていた知識を活かし、2013年にはがん患者向けビューティサロン「セレナイト」をオープンさせた。そこでお客様に伝えている、がん治療中でも美しくあるための知恵と工夫をまとめた一冊が『がん治療中の女性のためのLIFE&Beauty』(主婦の友社)だ。

 さとうさんの肩書きは、ビューティーライフアドバイザー兼ソシオエステティシャンで、医療従事者ではない。だが、美のスペシャリストでありながら、抗がん剤治療によるダメージに悩まされた当事者だからこそ書ける、心配りと優しさにあふれている。

 冒頭に書いた“気づきにくさ”はおそらく、この本を持ち歩いてケアしたい読者のため。外で開いても周囲の人にわからないよう、おしゃれなノート風のデザインになっている。ちょっとしたメモを書き込めるスペースもあるのは、治療の段階ごとに自分に合うケア方法をメモしておけるように、との配慮だろう。
 美しくあるために気をつけたいポイントやケア方法が書かれているが、日によっては体調のすぐれないこともある。そのため、ところどころに「今日は疲れちゃった……という人は」というミニコラムが挟まり、手抜きできるポイントが書かれているのも優しい。

 レビューを執筆するにあたり、偶然この一冊を読むことになったわけだが、新たに知ったことがたくさんあった。抗がん剤治療で、髪が抜けることや体力が落ちることなど、基礎的な影響は知っている……つもりでいたが、それはほんの一握りの知識でしかなかった。
 抗がん剤治療を始めると、化粧品のボトルキャップを開けることも大変なほど、握力が弱まること。髪のみならず、眉毛やまつ毛など、ほかの毛も抜けること。治療中は日焼けに注意が必要で、日焼け止めを塗るほか、肌を隠す服や帽子、サングラス、日傘も必要になること。ウィッグをつけるときはインナーキャップが必要で、手入れにも非常に時間がかかること。

 ヘアメイクやファッションにこだわりたい人にとって、これらの副作用や影響を抱えながら、美へのモチベーションを保つことは簡単ではないはずだ。変わりゆく姿を見るのがつらくて、外出する気がなくなることもあるだろう。しかし、同じ道をたどってきたさとうさんは「長く美容業界で働いていたので、試行錯誤しながら、できるだけ不自然にならないように、メイクをして、ウィッグをつけて、外に出ることになったのです」と語り、自身がおこなってきたスキンケアやメイク方法を伝授している。

 それはほんの少しの工夫、ちょっとしたコツ。一般的なスキンケアアイテムを使い、肌へ負担をかけないケア方法はもちろん、開けやすいようにポンプ式のボトルに詰め替えたり、眉が抜ける前に写真を撮っておいたり、胸の手術後に腕が上がらないときのボディタオルの使い方を記したり……経験者ならではの工夫点が満載だ。

 長年美容の仕事に就き、美容を通して輝く女性たちを見てきたからこそ、さとうさんは本書内でこう語る。

 治療を始めると、肌が敏感になる、黒ずむ、シミが増えるといった変化が見られることがあります。(中略)
 健康だったときのようにとはいかなくても、最小限のスキンケアでも肌を守ることはできます。お手入れをするという行為そのものが、疲れた心を前向きにさせてくれることもあるでしょう。

 治療が始まると、肌の質感や色が変わってきて、「鏡を見たくない」「人に会うことがつらい」という気持ちになることがあります。(中略)
 メイクをすれば、人と会うことや外出時の心の負担が減るはず。メイクアイテムを知って使い方のポイントを覚え、自分らしい表情を取り戻しましょう。

 重い病気を患ったことがなくても、つらい気持ちを抱えたとき、新しいメイクを試したり、前日よりも肌の触り心地がよかったりするだけで、ちょっと気分が上がった経験をしたことのある人は多いはず。だからこそ、このさとうさんの言葉と同じことを願わずにいられない。がん治療中の女性たちがこの本を手に取ることで「いまのつらい気持ちや生活が少しでも楽になるよう、今日よりも明日が快適でありますように」と。

文=富永明子

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