米林監督の映画版とは一味違う?『メアリと魔女の花』原作本の内容とは?

映画

更新日:2017/7/6

『メアリと魔女の花』 (角川文庫)

 2017年夏、新たな魔女がこの世界に勇気の魔法をかける。『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』の監督として知られる米林宏昌氏がスタジオジブリ退社後初めて手がけた作品映画『メアリと魔女の花』が7月8日、全国で公開されるのだ。原作は英国の女性作家メアリー・スチュアート氏著『メアリと魔女の花』だというが、一体どのような作品なのだろうか。

 魔女を描いた作品といえば、スタジオジブリ作品『魔女の宅急便』が思い浮かぶことだろう。『魔女の宅急便』では元々魔女の血を受け継いだ女の子が主人公である一方で、『メアリと魔女の花』ではどこにでもいる10歳の普通の女の子 メアリ・スミスが主人公だ。

 メアリは夏休みの終わりの一カ月間、大おばさまのシャーロットの所に預けられることになった。近くに同世代の子どもはいないし、退屈してばかりのメアリだが、ある日、黒猫ティブと出会うと、日常は一変する。ティブに導かれるようにさまよった森の中でメアリは「夜間飛行」というむらさき色の花を見つける。その花の汁がついた途端、ほうきはぴょんぴょん跳ね出し、メアリはティブと一緒にそのほうきに乗り込み、空の旅へ。たどり着いたのは、魔法学校エンドア大学。入学希望者と間違えられたメアリは学校の中を探検することになる。

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 魔法というと、キラキラした美しいものばかりを想像しがちだが、メアリが訪れた魔法学校エンドア大学で教えられている魔法は、ミルクを酸っぱくするものや切り株を枯らすもの、痙攣や痛みを起こすものなど、なんだか気味の悪いものばかり。最初は魔法学校に興味津々だったメアリも「こんな学校入学したくない」「はやく帰りたい」と思うようになる。だが、いつの間にかティブが実験動物として捕られてしまい…。“友達”を助けるために、一人で魔法学校へと乗り込んでいくメアリはなんと勇ましいことか。読者は皆、勇気を出して戦うメアリを懸命に応援している自分自身に気づかされることだろう。メアリは普通の女の子だが、何の取り柄もないわけではない。こんなにも強い女の子だったのかと思わせられ、クライマックスにかけての疾走感溢れる展開から目が離せない。

 普通の女の子が不思議な黒猫と「夜間飛行」の花との出会いによって、期間限定で魔女になる。誰でもヒロインになれる。ふとしたことから冒険に巻き込まれていくことがある。こんな夢があふれた作品は大人子ども問わず誰もが思わずワクワクさせられるはずだ。普通の女の子だったメアリは、この冒険で、自分自身の強さに気づく。彼女の頑張りが微笑ましく、思わず心震わされるのだ。

 米林監督による映画『メアリと魔女の花』は、この原作をベースに大きく脚色した冒険ファンタジーとなっているという。原作と見比べれば、楽しさも倍増。ぜひ2つを見比べてその違いを楽しんでほしい。あなたの心もきっとメアリの魔法に魅了されるに違いない。

文=アサトーミナミ