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30歳目前、未婚で無職。認知症の祖父の介護をしながら24週間限定で旅に出たら…

『女は今週も旅に出る』(根澄美希/文芸社)

 特に大きな不満がなかったとしても、自分の日常、人生について、ふと「このままでいいのだろうか」と疑問を感じることはないだろうか。それでもほとんどの人はそこにとどまり続けることを選んでいるはず。一方で、何かをきっかけに、人生を大きく変える決断をする人もいる。

 『女は今週も旅に出る』(根澄美希/文芸社)の著者は後者。大好きな旅にも出られず、忙しく過ぎていく毎日。素晴らしい仕事とは思えても続けるほどのやりがいを見出せず、将来を悲観するようになっていた30歳目前に、約10年間勤めた会社を退職した。実家へ戻り、髪を切り、新たな人生へと舵を切ったのである。本書では、その決断にいたるまでの心の葛藤にも触れながら、24週間限定で挑戦した大好きな旅の記録、旅を終えた先に見えた心境の変化と決意が綴られている。

 著者が描いた新しい人生は「夢を叶える旅に出る」こと。そのターニングポイントとなったのは、会社を辞める前年に行ったインドネシア旅行だったと本書で振り返っている。この旅で、抑え込んできた思いが再燃した。そしてもうひとつ、旅行中に偶然知ることとなった自分の理想の生き方をする女性の存在。その人は29歳で会社を辞め、世界に一人旅に出て、その体験を著書やサイトで発信していた。彼女の生き方に憧れ、影響を受けたという。

 仕事を辞め、いざ、バックパックを背負って世界へ出発! といきたかった著者だが、そうはいかなかった。実家で同居していた祖父が認知症になり始めたのだ。父を亡くしていた著者は、母と一緒に祖父の面倒を看る生活を選ぶ。その一方で、旅をしたい気持ちも捨てきれず、生活を守りながら旅に行ける方法を思いつく。それは週末を使って24週間、約半年という期間限定の旅。その間にどれだけの旅ができるかに挑戦したのである。

 石川県に住む著者が限られた時間の中でできる旅。行き先は、東京や長野、名古屋といった国内の日帰りの旅から、なんと、ロサンゼルス、デスバレーへの2泊3日の旅や、ハワイやインドネシアの旅まで多方面に及ぶ。回数ではなく、どれだけ充実した旅ができるかの挑戦でもあった。まるで取材のようなタイトなスケジュールであっても、多少のトラブルに巻き込まれても、しっかり楽しみ、感動する。旅が好きという想いとその時の心の動きが、素直な言葉で伝えられる。

 仕事を辞め、制限がある中で旅に出て、人生や自分自身が変わったと感じている著者が本書を通じて伝えたい最大のメッセージは「人生にもっと旅を!」。それは旅に出る素晴らしさを伝えたい言葉であると同時に、「行動が変われば未来も変わる」という、決意して実行に移すことの大切さも伝えているように思える。旅に出たいと思いながら踏み出せずにいる人たちに、人生をもっと楽しもうよ! と背中を押してくれる、そんな一冊だ。

文=三井結木

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