耳飾りが落ちる…日常の小さな出来事が実は大切なしるし♪ ヒットシリーズ『世界を旅するイラストブック』第3弾【銅版画作家インタビュー】

文芸・カルチャー

2017/8/5

「信じてみたい 幸せを招く世界のしるし」

■繊細な銅版画で表す、現実と理想がともにある世界


 茶柱が立ったら幸運、黒猫が前を横切るのは不吉の前兆といった、昔から伝わるさまざまな縁起話。そんなの信じてないし、なんて思いつつ、実際に起こればやっぱり嬉しかったり切なかったり。こんな経験はきっと誰にもあるし、それくらい私たちの日常に深く浸透しているものだろう。

 ヒットシリーズとなった『世界を旅するイラストブック』の第3弾、「信じてみたい 幸せを招く世界のしるし」は、そんなさまざまな“しるし”を世界中から集め、美しい絵と文章で紹介した一冊だ。挿画を担当した銅版画家・出口春菜さんも、実はこういった伝承をあまり信じる方ではなかったとか。

 「正直、普段はそんなに気にしてないです(笑)。でも、最初にこのお話をいただいた時は本当に嬉しかったですね、“私の絵に合ってるな“って。この本に書かれているのは、たとえ現実には起こらなかったとしても、そうであったらいいなと思えるもの。私も、そういった憧れや理想の世界を描いていることが多かったので」。

 本著の編集を担当した内貴麻美さんに、挿絵を出口さんに依頼した理由を聞いてみると、そこには本人が感じたのとはまた違った、内容との共通点が。

 「出口さんの絵は少女性があり可愛らしい反面、成熟した女性のようにすごく大人っぽい一面もあるんですよね。そんな二面性が、この本の“吉凶”というテーマ、いいことも悪いこともあるし、ひとつのものの表裏のようにすべては繋がっているという内容にぴったりだと思ったんです」。

■日常の小さな出来事が、実は大切なしるしかも


 そうこの本、“幸せを招く”というタイトルのわりにはいいことも悪いことも取り上げているし、むしろ全体で見れば悪いことの方が多いかもしれない。ただし、日本では不吉とされているものが他の国では吉となったり、もちろんその逆もあるので完全に区別することはできず、だからこそ面白い。そしてそのどれもが、何も知らなければ気にも留めないような些細な出来事ばかり。小さなことにも気づく心やものの見方で、日々はもっと豊かになると教えられているようだ。

 「なかでも私のお気に入りは“左から鳥が飛んでくる”というしるし。もともと鳥というモチーフが好きなのと、この本の中で一番描き込んだ力作、というのもありますが(笑)、ただ鳥が飛んでいるだけなのに、それをしるしと意識して見た瞬間、まったく違う世界に変わる。なんてことのない景色にも物語が生まれるのが、本当に素敵だなあって」(出口さん)。

■大切な人にこそ伝えたい、私を前向きにさせてくれる言葉


 国や地域によって意味が変わることのほかに、面白い点がもうひとつ。“耳飾りが落ちる”や“手紙を汚す”といった、小さくても悲しい出来事が、転じて吉兆を表すことが多いのだ。

 「本来は悲しくても、それが幸運のしるしだといわれたら、“そっか〜”って、なんとなく気持ちも変わるかもしれませんよね。それにこれは、過去の出来事にもいえるはず。“あの時のあれはそういうことだったのかな”という風に、しるしをきっかけに見方を変えて、悲しい思い出が少しでもポジティブなものになったら、すごくいいなと思うんです」(出口さん)。

 アクセサリーを落とすなんて経験は、女性なら一度や二度ではすまないはず。落ち込んでいる時に誰かがこんなエピソードを聞かせてくれたら、たとえそれが耳飾りでなかったとしても十分に癒やされそうだ。

 「ネガティブなことも受け入れていける感じが、あまり元気がないとき、なんだか不安になっているときに見てもらいたい気がします(笑)。人って“できる”と思えないとできないんですよね。思い込みってすごく大事で、たとえば四つ葉のクローバーやピンキーリングって、持っている人が“これは自分のお守り”って信じるからこそいいことが起きると思うんです。だからこの本にあるしるしも、信じてみることで、今より少し前を向くための小さな“支え”になってくれたらいいですね」(出口さん)

 示唆に富んだやさしい言葉と、加えて挿画の美しさから、この本をプレゼントにする人も多いそう。毎日をほんの少し楽しくすることも、さらには大切な人へ思いやりの気持ちを届けることも、実は思っているよりずっと簡単なのかもしれない。そんなことを気づかせてくれる一冊だ。