料理研究家だけど、「晩ごはんはふかし芋だけの日もあります」…料理に自信のない人を勇気づける、料理研究家の意外なおうちごはん

食・料理

公開日:2017/8/4

『毎日のごはんは、これでいい ―料理家7人のプライベートごはん―』(主婦の友社)

 タイトルの一言は、20冊以上の料理本を出版し、TV・雑誌でも活躍する料理研究家・牛尾理恵さんの実話。料理研究家というと、家でも一汁三菜どころか四菜、五菜は当たり前、テーブルコーディネートもばっちりでさぞかしインスタ映えする食卓なのだろう、と思いますが、実は違うみたいなんです…。

毎日のごはんは、これでいい ―料理家7人のプライベートごはん―』(主婦の友社)では、第一線で活躍する人気料理研究家7人が飾らない普段のおうちごはんを披露。仕事と子育てで時間がない! 働いてクタクタなのに料理なんてしたくない! そんな思いは、実は料理家の皆さんも一緒。7人7様のちょっと意外なエピソードを読み進めると、知らぬ間に料理に対して前向きになれているかも。というわけで、今回は3つのエピソードを抜粋してご紹介します。

■そこのお母さん! 一汁三菜にこだわらなくていい、毎日鍋だっていいんです

 こう言い切るのは、料理番組のレギュラー講師としても活躍する藤井恵さん。そんな藤井さんは、仕事と子育てに追われる中、夏でも毎晩「鍋」という時期があったそう。
「一日が終わると、このまま溶けてなくなってもいいかも、って思うほど、全力で駆け抜けていた感じでした」と語るほど慌ただしかった毎日。

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 そこで、「飽きないように塩・みそ・しょうゆの三つの味を日替わりでローテーションする」「だしだけはしっかりとる」ことだけを決めて、あとは冷蔵庫にある食材を適当に切って、土鍋に入れた汁と一緒に食卓に並べて終わり。とにかく自分がラクにできる方法を考えたのだとか。

 肉や豆腐のたんぱく質、そして野菜もたっぷり摂れて栄養的には満点の鍋だから、母親として「毎日同じでも大丈夫」と救われたそう。娘さんも旦那さんも一言も文句を言わず、シメのうどんまで楽しんでいたそうですよ。

「一汁三菜にこだわらなくていい。毎日、同じメニューでもいい。それで子は育つんです」

■くず野菜で浅漬けだけ作りおきすれば、コンビニおにぎりでも「大丈夫」

 仕事でヘトヘトになって帰ってきたとき、自分のためだけに料理する気にはなかなかなれませんよね。料理家の重信初江さんは、本当に忙しくてコンビニおにぎりやカップラーメンで済ませるとき、作りおきの「浅漬け」を重宝していると言います。

「余り物の野菜をまとめてポリ袋に入れて、昆布茶とお酢と塩で漬けるだけ」。これなら保存もきくし「そのまま食べても、トーストにのっけても、飽きたらツナマヨで和えたりもできる」という万能選手。

 ちなみに「一人暮らしの作りおきは“ゆるい作りおき”がおすすめ」なのだそう。きんぴらなどの常備菜をしっかり作ってしまうと「またきんぴらかぁ」となり兼ねないので、アレンジが利く「茹でるだけ」「漬けるだけ」の“ゆる作りおき”の方が逆にいいのだとか。

「ほんとに忙しくてコンビニのおにぎりで済ませることがあっても、作りおき1品があることで、とりあえず大丈夫って思える。この“大丈夫”感って、すっごく大事なんです」

■料理はレシピから考えず、冷蔵庫にあるものから考えて

 TVや雑誌でおなじみの料理家・浜内千波さんは「スマホを見ながら作っていては、本当の“料理力”は身につかない」とズバッと言い切ります。

「料理とは材料+調理法+調味料の組み合わせ。ただそれだけ」。「例えばスーパーで安かった鶏肉を買いました。じゃあフライパンで焼いてみよう。味つけは、面倒だからポン酢でいいや」。「これでいいの、とってもおいしそう」。

 思わずおなじみの浜内先生の声で脳内再生されましたが、何だかそう考えると毎日の料理がすごくラクになりますよね。浜内さん曰く「手持ちの料理は10品もあれば十分。あとは季節によって材料を少し変えるだけでいい」とのこと。これなら頑張れそうな気がしませんか。

 他にも「お弁当のパターンの決め方」「一人暮らしに便利な常備食品」など、実体験に基づくとってもためになるノウハウが満載。「料理上手はいい女」のプレッシャーを撥ね退け、「楽しむことが大事」「無理しないことが大事」と優しく諭してくれる本書。「いいね」の呪縛、インスタ映えの呪縛に捕らわれて料理難民になっている方にも、そもそも何のために、誰のために料理をするんだっけ? と、大切なことを思い出させてくれる一冊です。

文=八巻奈緒