大人気コミック『orange』完結後に描かれた2つの物語――菜穂と須和は後悔からどう立ち上がったのか?

アニメ・マンガ

2017/8/16

『orange第6巻‐未来‐』(双葉社)

 2015年秋、大反響の中で惜しまれつつ5巻で完結した高野苺の青春SFラブストーリー『orange』(双葉社)。その後は実写映画やアニメにもなり、いろいろなカタチで『orange』ワールドを繰り返し味わってきたファンも多いことだろう。そんなファンに朗報だ! なんと「終ってしまった」と思っていた物語に、続巻の『orange第6巻‐未来‐』が登場したのだ。

 まずは『orange』を知らない方のためにおさらいしておこう。『orange』とは青年コミック誌『月刊アクション』で連載されていたコミック作品。同じ高校に転校してきた同級生の翔(かける)を自殺から救えなかったことを後悔する菜穂、須和、貴子、アズ、萩田の仲良し5人組が、26歳になり、過去の自分に手紙を書き、その手紙を受け取った高校生の菜穂たちが「未来」を変えていこうと奮闘する青春群像ストーリーだ。

 叙情豊かな長野の松本を舞台に、まぶしいほどに「青春」なキャラクターたちが友情を深め合う姿や、好きなのに相手を傷つけてしまう…そんな純度の高い菜穂と翔の恋の行方など魅力たっぷりの学園ストーリーに加え、タイムパラドックスというSF風味が絶妙な隠し味となり話題に。みずみずしい世界とスリリングな展開には中毒性があり、コミックス発売当時はとにかく「早く続きが読みたい!」と続巻を待ち望む声が多かった。堂々完結した現在は累計480万部を記録する大ヒット作となり、いまも男女問わず幅広い層から支持されている。

 さて、問題の第6巻。完結後約1年半ぶりに生まれた新刊には、劇場アニメーションの原作となった「orange‐未来‐」編(『月刊アクション』2017年3月号掲載)と、同じく連載終了後にスピンオフ的に『月刊アクション』で連載された「orange‐須和弘人-」編(『月刊アクション』2016年12月号~2017年2月号掲載)が収録されている。どちらも菜穂と翔2人を見守り続けた須和の目線から語られるストーリーだ。

 一つ目の「未来」編は、菜穂と結婚した未来の須和から「俺はズルいヤツだ」と書かれた手紙を受け取った高校生の須和が、自分の心と葛藤し、仲間たちに支えられながら、翔と菜穂のためにある決断をし、これまで描かれたことのなかった「未来」を生み出していく物語。二つ目の「須和弘人」編は翔のいなくなった世界で自然にバラバラになってしまった仲間たちが高校卒業後にどんな人生を歩み、菜穂と須和がどうやって結婚に至ったのかを描いた物語。地元の大学に入学した須和は菜穂に偶然再会するが、寂しげな微笑みしかしない彼女に心からの笑顔を取り戻したいと奮闘。翔の存在を超えられないジレンマに傷つきながらも、菜穂にまっすぐ向きあっていく。

 一見、サッカー好きの能天気なキャラの須和だが、実は菜穂への恋心と翔への友情の板挟みに苦しむセンシティブで相手の気持ちを察するいいヤツ。今回はそんな須和に寄り添うだけに、自己犠牲的で不器用でまっすぐで、もうひとつのせつない『orange』が立ち上る。本編の世界観をさらに深めるその内容に、出るはずのなかった「6巻」という位置づけも納得だろう。

 ちなみにカバーには「6巻も最後ではないのかもしれません…」という作者からの意味深なメッセージも。『orange』から目が離せない幸せは、まだまだ続くのかもしれない。

文=荒井理恵