「他人の夢を破壊したい……」根暗男子と夢を喰らう神様が織りなす、究極の人生選択ファンタジー『ユメクイ』

アニメ・マンガ

2017/12/17

 人生には無数の可能性がある――。似たようなことを言われたことがある人は多いだろう。確かに、それは事実。まばゆいほどの未来を夢見ることで、人は前進できる生き物だ。けれど、将来になんの希望も抱けず、ただただ無駄に時間を消費するだけ、という人が少なからずいることも否定はできない。12月13日(水)に、TSUTAYA限定版として第1巻が発売された『ユメクイ』(あずまたま/コミックスマート)の主人公・希望天夢(のぞみ・てんむ)も、まさにそんな人物だ。

 本作は“夢”をテーマにした、日常系ファンタジーマンガ。連載型新作マンガアプリ「GANMA!(ガンマ)」にて配信中の作品で、10億PVを突破したという超人気作だ。

 ストーリーは夢というものを否定する天夢のもとに、人間の夢を喰らう神様「ユメミ」が現れたところからスタートする。ユメミは、複数の夢を持ち悩む人間に「未来の選択」を迫り、選ばれなかった方の夢を食べてその可能性を消滅させてしまう神様。そんなユメミと出会ったことで、天夢は、他人の夢を破壊しようと企むのだ。

 ここまで読むと、天夢が非常にクズな人間のようにも思えるが、では、彼を断罪することができるだろうか。夢に向かって努力している人、キラキラしている人を見て、「うらやましい」と感じたことがある人は少なくないだろう。そこには、人には言えないような嫉妬心だって滲んでいたはずだ。それは、自分になにもないから。だからこそ、明確な目標を見つけた人を見ては、うらやみ、嫉妬し、そして自分に絶望する。天夢は、そんな人たちの代弁者ともいえるキャラクターだ。

 第1巻では、天夢の幼馴染や先輩が夢に悩む姿が描かれる。その姿を見た天夢がなにを思うのか。彼が葛藤する姿はきっと、読者の心に波紋を投げかけるだろう。

 さらに、第1巻と同時に、第0巻と称したユメミの「前日譚」をまとめた一冊も発売されている。こちらで描かれるのは、大正の時代を生きる、ふたりの男女の物語。名家の跡取り息子・春彦(はるひこ)と、許嫁であり不治の病を患う、さくら。彼らの運命にユメミが絡むことで、夢が人生の原動力になるさまが見事に描かれている。

 夢に向かっている人、夢を持たない人、挫折した人、探している人……。夢をテーマにした本作は、きっとどんな人の心にも届くだろう。ちょっとひねくれた男子・天夢と、夢を喰らう神様・ユメミとの物語から、あらためて夢について考えてみたい。

文=五十嵐 大