キムタクは“ヤンキーの美学”の到達点!?

芸能

公開日:2012/7/14

 日本人は、昔もいまもヤンキーが大好きだ。オタクからギャルまでが使用する“半端なことではない”の略語「パネェ」の語源はヤンキー言葉だし、清純派女優やアイドルの元ヤン時代の写真はスクープとして写真誌を賑わせる。インターネットの発達で、あらゆる情報も、昔なら都市部にしか売っていなかったようなファッションも、さらには多様な価値観にも簡単にアクセスできるというのに、いまだにヤンキーに憧れる若者は多い。ダサいと言われるにも関わらず、決して絶滅しない。大いなる謎である。

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 そんな疑問の答えに近づけるのが、先ごろ発売された『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』(斎藤 環 角川書店) 。精神科医の斎藤環による、ヤンキーの美学に迫る1冊だ。この本を読むと、じつに多くの文化がヤンキー的テイストに支えられていることがわかる。

 その好例が、木村拓哉の存在だ。本書は、「(日本人は)キャラ性をきわめていくと必然的にヤンキー化する」と定義しているのだが、確固たるキャラを確立しているキムタクは、いわばヤンキー美学の極み。それを裏付けるように、彼の語録はヤンキーに愛される詩人・相田みつをに通じるらしい。徹底してベタであり、実用的かつ現状肯定的。斎藤は、この広い意味での保守性が「気合を入れる」「ハンパはしない」というヤンキー的倫理観に近いと批評している。――この保守性は、ビジネス書や自己啓発書のベストセラーのテーゼに当てはまる気がしないでもない。ヤンキーの美学は、日本人の多くが愛し、求めてやまない精神性にも似ているといえるかもしれない。

 このほかにも、ヤンキー文化と母性の問題や、ヤンキーと古事記の関係を解き明かすなど、多方面からヤンキーにアプローチしている本書。とりわけ注目に値するのは、橋本徹人気は「ヤンキー好き」感性が後ろ盾になっているという指摘だ。果たして、そのことから導かれるヤンキー文化の可能性とは? 答えは、本を手に取って見届けてほしい。

「ヤンキーなんて遠い存在」なんて思っているあなた。読み進めると、内なるヤンキー性にドキッとする瞬間が……あるかも!?