読者がいがらしみきおに追いついた!?

マンガ・アニメ

2012/8/9

 東北を舞台に、「神様」の存在を真正面から描こうと試みる『I【アイ】』。山上たつひことのタッグが話題で、元受刑者を受け入れた田舎町を舞台にした物語『羊の木』。どちらも、いがらしみきおの注目連載だ。加えて、四コママンガ『ぼのぼの』も健在。作品の振り幅にはいつも驚かされる。

 そんないがらし作品に最近、鬼気迫るものさえ感じるのは、私だけでないはずだ。その理由は、作家自身が変化したというよりは、震災後に、読者の心境が変化したことが大きい。例えば、最新36巻の『ぼのぼの』には、「木はいつまでもそこにあると思っていた」というテーマで、昔からある大樹が枯れてしまう話が掲載される。津波で被災した一本松を思い出した人は多かったのではないか。作者がそれを意識して描いたかは分からない。しかし、そもそも、いがらしは、震災以前から、こうした根源的な問いを描いてきた。それらの問いが、現実の出来事とダイレクトにリンクする今、作品から読み取れる切実さが増した。見慣れた日常が突然崩れた3.11以降、『I【アイ】』や『羊の木』の世界は、よりリアルに迫る。連載作品へますます注目するのと同時に、過去の作品も改めて読み返してほしい。

文=倉持佳代子
(ダ・ヴィンチ9月号「出版ニュースクリップ」より)