「発達障害」の書籍が急増中 その理由は?

社会

2012/8/19

 「彼はいつも落ち着きがないけど、ADHDなんじゃないの?」「あの人のこだわりの強さは、アスペルガーっぽいよね」。――近ごろ、こんな会話が日常で交わされるのもめずらしくなくなってきた。ADHD(注意欠陥・多動性障害)もアスペルガー症候群も、広汎性発達障害と呼ばれ、ここ十数年のあいだに広く認知されるようになったもの。この発達障害に関する本が、子ども向けのものから大人向け、さらにはマンガまでと、いま急増しているのだ。

 最近では、2012年「科学ジャーナリスト大賞」を受賞した新聞連載をまとめた『ルポ・発達障害:あなたの隣に』(下野新聞編集局 取材班/下野新聞社)や、同じく新書の『発達障害と呼ばないで』(岡田尊司/幻冬舎)などが刊行されたばかり。また、『発達障害の子どもたち』(杉山登志郎/講談社)は18万部のロングセラーとなり、昨年にはその続編『発達障害のいま』(杉山登志郎/講談社)が発売。はじめて発達障害に触れる人に読みやすい構成になっているものも多く、『もしかして私、大人の発達障害かもしれない!?』(田中康雄/すばる舎)や『アスペルガーのパートナーのいる女性が知っておくべき22の心得』(ルディ・シモン/スペクトラム出版社)など、ケース別にさまざまな本がある。マンガでは、体験を基に描かれたコミックエッセイ『旦那(アキラ)さんはアスペルガー』(野波ツナ/コスミック出版)や、発達障害を抱えた専業主夫による育児奮闘記『プロチチ』(逢坂みえこ/講談社)はネット上でも話題になっている。しかし、どうしてここまで発達障害を扱った本が増えているのだろうか。

 実は、ここ数年、発達障害と診断される人の数も急増しているのだという。『発達障害と呼ばないで』によると、ADHDの児童の有病率は日本で6パーセント、アメリカでは10パーセントに近くにのぼる。アスペルガー症候群も含まれる自閉症スペクトラムにいたっては、30年ほど前は1万人に数人の割合だったのが、2000年ごろには1000人に当たり7~8人に。さらに最近では、100人に1.4人という調査結果もあるようで、「発達障害は、とどまる所を知らない勢いで増加し続けている」と書かれている。

 しかし、発達障害に関する本を見ていると、目をつくのが過敏になりすぎている大人たちの対応だ。たとえば、『発達障害の子どもを理解する』(小西行郎/集英社)では、病院や保健所の乳幼児検診などで「泣いてばかりで言うことを聞かない」「人と目を合わせない」といったささいな行動を発達障害の「症状」と結びつけるケースを紹介している。さらに、『発達障害という記号』(編集:松本 雅彦、高岡 健/批評社)では、「KY」が流行語になったことと、発達障害への関心が強くなったことの関連性についても考察。「KY」を“集団に従えという指令”と読み解き、「自分たちの健康や安全への侵入を妄想的にまで怖れ、過剰に「迷惑」を排除するようになった」と書いている。発達障害の本が増加している背景には、過剰な診断や、大人たちが敏感になりすぎている心情が映し出されているのかもしれない。

 適切な対応を知る手がかりとして、また、正しい知識を身に付けるきっかけとして。この機会に、本を通して発達障害について触れてみてはいかがだろうか。