山ブームの極み!? ワイルドすぎる「サバイバル」登山

スポーツ

2012/10/3

 「登山」と聞いて思い浮かべるのは、澄み切った青い空と緑の山々を歩いたり、もしくは、天に向かってそびえる高峰への果敢なアタックの姿などがあるだろう。他にもカテゴリーは多岐にわたり、ロッククライミングや沢登りなど、さまざまなジャンルがある。

 そんななか、「サバイバル」をテーマにしたスタイルで山へと向かう登山家が注目を集めている。その名は、服部文祥。『サバイバル登山家』(みすず書房)や『サバイバル!―人はズルなしで生きられるのか』(ちくま書房)、『狩猟サバイバル』(みすず書房)などの著書も多い、山岳界でも異色の登山家だ。

 「サバイバル登山」とはラジオやライトなどの電池を使う装備を極力排し、食料は現地調達、そしてフリー&ソロクライミングで山に立ち向かうというもの。服部が独自に提唱、実践しているものだ。

 服部は大学時代、ワンダーフォーゲル部に所属し、卒業後は世界で2番目に高く、難易度の高いK2(8611m)に登頂。その後も国内外の難所を初登攀(とうはん)するなど、偉業を達成してきた。その経歴をみると、かなりの猛者であることがよくわかる。

 しかし、服部はいつしか装備やポーターに頼る登山に疑問を呈するようになる。人に荷物を運んでもらったり、装備に登らされているような感覚は、ズルをしているような思いにさせたというのだ。自分の力だけで登り、生き抜く。そんなスタイルを追い求めた結果、「サバイバル登山」にたどりついた。

 沢ではイワナを釣り、山野に自生するキノコや野草を採り、ついには、シカやイノシシなどの動物を狩り、捌き、食す。ガスは使わず、たき火をして調理をする。ときに山行は30日以上にもなるなど、常識的に見れば、無謀とも捉えられるような登山スタイルだ。

 人はかつて、自らの命は自分で守り、食べるものは自力で手に入れていた。服部は、人間の根源的な営みにある、生の喜びをサバイバル登山を実践することで感じているのだ。

 『サバイバル登山家』の表紙に見られる、一見、野性的なイメージとは裏腹に、服部の自然や生き物に対する姿勢は謙虚だ。それは、服部が人間は自然があるからこそ生きることができ、日々食べている食事は、命を殺して得られているという、普遍的な事実をサバイバル登山であらためて強く感じているからなのだろう。現実的に一般の人、いや、ある程度、登山に親しんでいる人であってもサバイバル登山を実践するのは難しい。根本的な登山技術や知識、経験に裏打ちされた高い判断力が求められるからだ。しかし、服部がサバイバル登山で得た境地、ひとりの登山家が追い求める人間本来の姿を知るだけでも本書を読む価値があるだろう。