山本浩二が監督でWBCは勝てるのか?

スポーツ

更新日:2012/10/24

浩二の赤ヘル野球

 選手会の参加ボイコットに始まり監督決定に至るまで、なかなかひと筋縄に行かなかったWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)問題。それでも、山本浩二氏が正式に監督就任し、侍ジャパンはなんとか来年春に向けた一歩を踏み出した。

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 ところで、その監督となった山本氏だが、2005年に広島カープの監督を退いて以来、08年に北京オリンピックのコーチを務めた程度で、若い年齢層にはなんとも馴染みがない。いったいどんな人? と、過去の著作を調べても皆無に近い状況だ。唯一、自身が監督采配について考えを述べているのは、広島カープの監督に初めて就任した1989年3月に、それまでの解説者時代に週刊誌に連載していた記事をまとめた『浩二の赤ヘル野球』(文藝春秋)がある程度。年に数度のペースで著書を出している野村克也氏や、『采配』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなった落合博満氏などとはまさに対極の存在だ。

 となれば、あとは少しでもその“匂い”を感じ取れるものを探すしかない。そこで、同氏が30年以上にわたり選手、監督として関わってきた「広島カープ」をキーワードとして調べてみた。

 まず、その人柄については、山本氏の現役時代にカープの監督を務めた恩師・古葉竹識氏の著作『耐えて勝つ』(ザ メディアジョン)にて、「明るく立派な人間性はどこでも誰からも愛される」と書かれている。さすがに長年カープを引っ張って来ただけあってリーダーとしては申し分なさそうである。

 ただ、肝心の監督としての采配ぶりについては、『衣笠祥雄は、なぜ監督になれないのか?』(堀治喜/洋泉社)での歴代カープ監督成績の比較において、「2001~2005年の2度目の監督時は意欲に欠けていると言われても仕方なく、おおらかな性格が災いして投手交代のタイミングを失することも」という主旨の分析がなされている。前出の『浩二の赤ヘル野球』でも、親友である星野仙一(現楽天監督)から「お前は選手を褒めれてもよう叱れんじゃろ?」とも指摘されており、そのことから考えても山本氏は「勝利のために厳しい決断も辞さず、選手をグイグイ引っ張る」という“オレオレ系”ではなく、「誰からも好かれる求心力で、選手が後押ししてくれる」“おおらか系”と言えそうだ。

 ならばWBCにおいても、調整や作戦といった厳しい判断が求められる実務は優秀なコーチ陣に任せ、自身はチームの顔としてムードを盛り上げることに徹すればいい。来年3月2日から始まる第3回大会では、第1ラウンド(福岡)から強豪・キューバが同じグループに入るなど、過去2大会よりも厳しい条件と言われている。だが、「浩二のおおらか侍ジャパン」を前面に出して選手のモチベーションを最高潮にもって行ければ、元々2大会連続世界一と力があるだけに、3連覇はより現実のものとして見えてくるに違いない。