秘部処理なしでどこまで迫る? アニメに見るエロティシズムの可能性

マンガ

更新日:2012/11/19

 今年7月から9月にかけて放送されたアニメ『カンピオーネ! ~まつろわぬ神々と神殺しの魔王~』は、普通の高校生から神殺しと呼ばれる魔術師の王(=カンピオーネ)のひとりとなった主人公・草薙護堂がさまざまな神と対峙し、その大いなる力を駆使して戦っていくというストーリー。特に話題となったのは、倒すべき神の知識を得る手段が口移ししかないということ。そのため、護堂が神と戦う際は、サポートする複数のヒロイン(魔術師、巫女、騎士など)たちから教授してもらうためにキスをしなくてはならず、濃厚なキスシーンがことあるごとに登場した。これは原作のライトノベル(丈月 城:著、シコルスキー:イラスト/集英社)からのものであり、アニメでもほぼ踏襲されている。

 近年の桃色系(?)アニメは、同時期に放送された『はぐれ勇者の鬼畜美学』や『だから僕は、Hができない。』などの例にもれず、女性キャラの過激な肌の露出が多い。だが、放送時は規制により、その秘部を光や影、あるいは何らかのマーク等により隠す処理がされている。「全部見たければDVDやBDを買って規制ナシの完全版を見てネ!」ということなのだが、ファンによってはそうした処理の乱発によってテンションがガタ落ちし、ストレスを溜めるケースもあるようだ。かといって、高い金を払ってDVDを買いそろえるには経済的にも限界がある。

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 そんな中、肌の露出は抑えながらも(若干のサービスはあるが)、キスの濃厚さにより「下手なアダルトものよりよっぽどエロい!」とインパクトを与えた『カンピオーネ!』は、規制の厳しい今のアニメにおいて、エロティシズムのあり方を考えさせるものがあった。

 実は、こうした肌の露出に頼らない表現への挑戦は、以前からさまざまな作品で試行されている。いくつか例を挙げると、まず最新劇場版『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の公開が11月17日に迫っている『新世紀エヴァンゲリオン』の旧TVシリーズ。作戦課長の葛城ミサトとその恋仲にあった加持リョウジとのベッドシーンでは、画面がホテルの部屋内ベッド付近の1箇所を映す状態で固定され、その行為の音声のみが数分間に渡って流された。

 また、「化物語」シリーズ(西尾維新/講談社)の『偽物語』で、主人公の阿良々木暦が妹・火憐と勝負したときに、阿良々木が火憐の歯を磨いたシーン。口の中や舌の動きがどアップで描かれるとともに、他人に歯を磨いてもらうことの思いがけぬ快感に身をよじって悶える火憐の描写が驚くほど艶かしく、放送時には掲示板やtwitterの書き込みでも「エロい!」、「これはアウトだろー!」という熱い反応が数多く見られた。

 さらには、主人公・椿明と卜部美琴の高校生カップルがお互いの絆を確認する手段が“相手のよだれをなめる”ことである『謎の彼女X』(植芝理一/講談社)のように、純愛ストーリーの中にアブノーマルな要素を加えることで、独特な“ネットリ感”を演出している作品もある。

 もちろん、“裸バーン!”を前面に押し出す作品の人気も根強いが、間接的なエロティシズムは視聴者の脳内でさらに妄想が拡大し、時として直接的な表現をも超越する可能性がある。

 となると、今のような規制の厳しい状況において、こうした秘部処理なしで規制ギリギリを目指す表現がもっと増えていくのかもしれない。人間の脳ミソを刺激する“エロ”は、裸を見せることだけに留まらないということか。

文=キビタキビオ